幼くして両親を事故で喪い、泣き暮れていた私を引き取って育ててくれたのは、私が生まれて間もない頃に隣に越して来たきょうだいでした。
母親のようであり、姉のようであり、こう言ってしまうと薄情者のようではありますが、物心付いたばかりの頃の私を引き取って育ててくれた二人は、産んでくれた両親よりも大切な人かもしれません。
暫くして、私も自分のエンブリオを持つ頃合だという事で、ねえさま達ととっ捕まえに行きました。一応、ねえさまの援護無しに自力でとっ捕まえる事には成功し、そのまま使役にこぎつける事が出来ました。
「ところで、そんなのとっ捕まえて何に使うの?」なんて言われてしまいましたけど……いいんです。びびびっと来たんです。
水が出せたり炎が出せたり光ったりするエンブリオなら生活にも使えて便利でしょうに。などと散々な事言われる程度にはそういったエンブリオの方が便利で、というか生活に利便性を求めてエンブリオを確保する人の方がやっぱり多くて。
その程度には日々の生活の礎となっているエンブリオとの契約。そしてそれらとの契約に必要とされるネクターというのは、言ってしまえば水のように大切な存在です。
あれだけ私のエンブリオに色々言ってたねえさまは「確かに便利だけど、まあ、居なくちゃ死ぬって訳でもないし」等と暢気な事を仰って、けれども私は正直我慢なりません。
周りの大人達も一揆じゃー!打ちこわしじゃー!ってめちゃくちゃ怒ってますし、私も結構激おこぷんぷん丸です。
だって、もっともっと色々出来るようになるんだなー、って思ってた矢先にこの仕打ちですよ?新しい朝が来ると思った途端、「やっぱずっと夜のままにします。」とか言われて許せるはずがありません。
そんな感じに激おこなんですけど、私一人じゃ心元ないし、みずきちゃんを危ない目に逢わせるのもナンだし、だからといってねえさまだけ連れてく訳にも行かず。
我が家の物置(気のせいかもしれないけど、外見の何倍も広く感じる)には、良く判らないけど『なんかヤバそう』『なんかスゴそう』『なんかコワい』品が普通の品に紛れてゴロゴロ転がってて、例えば大掃除の手伝いで潜った時に見かけた刀になんだかすーっと吸い込まれるように近付いていってしまって、ねえさまにチョップで気付けして貰ったとか(後でアレが妖刀って言われるアブナイ刀だって教わりました。銘は確か子狐丸だかなんだかだったような)
指に嵌めて気合を入れるとなんかこう魔力的なオーラがぶわーって出て、それで適当にチョップとかするとスゴイツヨイ指輪見つけたので適当に借りておく事にしました。か弱いオトメに護身用の武器は必要ですもんね!
他にも物置の中には下手な図書館並みの数の本も揃ってたりして、暇つぶしには丁度良い感じだったりします。
その中には魔道書と呼ばれるモノもいっぱいあるそうで、ホントはあんまりその辺の本をテキトーに開いちゃダメなんだそうです。『当たり』を引いたらとんでもない事になるとかなんとか。
具体的には異世界から神様とか呼び出したりできちゃうかもしれないとか。(SAN値がどうとか言ってた気もしたけどよくわかんなかったです。)
そう、そうですよ。その『召喚魔法』さえ覚えれば、私だって神様とは言わずとも勇者様とか呼んで悪い王様やっつけて貰えるんじゃないでしょうか。
と、思い立って三日三晩物置に入り浸り召喚魔法をとりあえず習得。
近所のおじさんが酒に酔って言ってた「一揆はな、四人くらいで動くのが丁度いいんだ。二人?まさか、あれは伝説さ。たった二人で城が落とせるのは、後にも先にもあの伝説の二人だけさ……いいな?一揆は四人で動くんだ。二組の八人はもっといい。ソレを越えるのは(以下酒臭いので聞くのを諦めました)」という発言を信じる訳ではないけれど確かにあんまり人数多いと動きづらいよなーということで適当に三組くらい呼んで見る事にしてみました。
どんなのが出るかなー。たのしみだなー。