どうしてこうなったのだろう。
……いや、どうして此処にいるのかは解っているのだ。

ただ——

「……まさか無機物、とはな」

私は識っている。この身体は“救えなかった機械世界の私”だ。
私は識っている。この心は“救えなかった精霊世界の私”だ。

「つまり、名誉挽回しろと？」

誰にともなく、そう呟く。
強いてあげるならば、クソったれな創造主に向かって。

何にせよ、今はどうする事も出来ない……文字通り。
どうやら世界移動時の衝撃で駆動系がイカレているようだ、
最悪ここで朽ち果てる事になろう。

「……それも良いか……」

私は世界を救うために存在している。
……大義名分はご立派だが、それを完遂した記憶はない。
つまり、私は不良品なのだ。

「ゴミのように打ち捨てられ、森の中で朽ちていく。
　……不良品には相応しい末路ではないか」
　　　　　　　　　　　スリープ
その言葉を最後に、私は機能を休止した……。

——“そいつ”がやって来るまで。

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『……ちょっと待って』

誰かの声がする。
如何程の時間が流れたのは知らないが、随分と久しい事のように思える。
だが、今まではスクラップと見ると近寄りもせずに立ち去るか、
解体して資材にしようとする奴等ばかりだった。
勿論、後者は“丁重に”お帰り頂いたがね。

……兎も角、どうせコイツもその手合いだろう。
そう考えて口を開くと……。

『『この子』の修理をさせてもらえないかな』

近寄ってきて、あまつさえそうのたまうのだ。
……酔狂な奴もいたものだ。

どうせ朽ち行く予定の身、如何様にでもしてくれるが良い。
それで直れば、儲け物。

「……勝手にしろ。
　私は所詮“道具”だ、所有者がいなくては始まらん」

——こうして、私のこの世界での幕は開いた。
今度の舞台は喜劇か悲劇か、それは最後まで分からない。

こつん、と軽くシートを掌で叩き口元を僅かに歪める。
冗談めかすような仕草の後、断りを入れtから座席に腰を掛けた。

だから、と少し間を置いて。