「ねえ風姫、聞いた？」
　街道を歩きながら、赤い髪の少女が横に立つ緑の髪の少女に声をかける。
　赤い髪と緑の髪。大きな緑の目と赤い目。そっくりな表情と、逆な色合い。そうして、その少女たちの背中には片方だけずつ、対になるように片方だけの羽根があった。
　二人の服装もまた対照的で、赤い髪の少女はスカートで可愛らしく。緑の髪の少女はズボンで動きやすく。それでもフリルのたくさん付いた服装は可愛らしく見えた。
　風姫、と自分の名を呼ばれた少女は横の少女に視線を向け、不意の言葉に不思議そうに大きな目を瞬く。
「何を？　熾姫」
「一揆、だって！」
　一揆。
　聞きなれない単語に風姫は素直に首を傾げる。同じ方向に首を傾げた、どこか楽しげな笑みを浮かべたままの熾姫と呼ばれた少女はうふふ、と楽しげに微笑んでからあのね、と説明を始めた。

　＊＊＊

「……つまり、王様倒しちゃえ、ってことかな」
「だと思う」
　熾姫の説明に風姫がさらりと結論付ける。そうして、少女たちは顔を見合わせた。とある事情も含めて見聞と称して二人きり、旅をしながら辿り着いたこの王国。確かに妙に荒れているとは思っていたが、結果として理由がわかって納得もいった。見詰め合う赤い瞳と緑の瞳。
　ふふ、とどちらからともなくふと、笑った。
「じゃあ、久し振りに暴れちゃおうか？」
「楽しくなりそうだねぇ」
　ぱん、と二人でいい音をさせながらのハイタッチ。そして少女たちは顔を見合わせて笑いあう。どこか楽しそうに、嬉しそうに。
　止めていた足をまた動かして、二人並んで歩き出す。左側に熾姫、右側に風姫。お互いの手をしっかりと握って、はぐれることはないようにと。
「ねえ、とりあえずどうする？」
「いつも通りでいこうか？」
　くすくす、と。懐かしい時間を思い出し、二人は頷きあう。
　ぱっと手を離した熾姫が一歩前へと駆け出し、離れた手と熾姫を見比べた。
「さぁ、行くですよぉ、風姫！」
　ぴっ、と指を突きつけた熾姫が僅かにトーンの上がった声で楽しげに口にし、茶目っ気たっぷりに片目を瞑る。それを見つめてぱちぱちと目を瞬いていた風姫はくすっと小さく笑い、それから頷いて同じように指先を向けて笑い返した。
「はぁい、行きますですよ、熾姫！」


「とりあえずはお仲間づくりですねぇ」
「声かければ誰か拾ってくれますですよぉ」
「そうですねぇ。期待しますです？」
「ですねぇ？」
「今回は楽しいといいですねぇ」
「熾姫は暴れたいだけじゃないんですかぁ？」
「そんなことないですぅ。酷い話ですねぇ風姫」


懐かしい喋り口。
テンポよく応酬される会話に自分たちで笑いが漏れる。
こんなに楽しみなのは久し振りだ。
耐え切れずあはは、と二人で笑い出したところで目的の城が見えてきて、よしとどちらともなく頷いた。


「「たのもー、ですぅ！」」