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元素の世界、メルンテーゼ。
今や、暴君とも呼ばれていそうな王様のお陰で騒がしいこの世界は
今日も騒がしく”一揆”の事でどこもかしこも慌ただしい。

そんな場所に、白いローブを纏った女は周りのあまり良いとは言えなさそうな騒ぎの最中に居た。
鈍い動きの割に行き交う人々にぶつからないように、上手く人を避けて歩く足取りは緩慢な動作の割に、
的確にその場の人々の合間を縫って行く。

ローブの女の側の彼女よりも小さな背丈の女がうんざり顔で話しかけている。
その声に、ローブの女は少し慌てた様子で大丈夫、大丈夫、を繰り返しているが
側の女は信用出来ない顔を崩すこと無く嫌な視線を向けている。

結果が及ばなければ意味が無い、と言いたそうなシイナと呼ばれた女は
やってられないわ、と一言残すと人混みに紛れるとあっという間にその場から姿を消してしまった。

美味しいものを探してくる、と言ってシイナより前に別れた友人を思い、小さく女はため息を吐いた。
別れた友人と、後からこの世界で知り合ったシイナの事を考えると次から次へとため息が溢れる。
あの二人の相性の悪さ、そしてそれを収めるべきは自分しか居ない事。
前途多難な、この世界の日常に早くも不安を覚えずには居られなかった。

白いローブにくすみがちの青の髪と青から黒へと変化する翼を持つ女、
シンシア・シーリーと名乗っているこの女はこれ以上、面倒なことには出会いませんようにと
ただただ心の中で祈った。



しかしその祈りはあっさりと短い時間で敗れ、
後に腕試しが必須と隻眼の大きな男と退治する事になるのである。

勤勉とは言いがたく、物事を器用にこなす器用さもない。
そんなシンシアのこの世界での日々は多くの悩みとため息と共に始まったのである。