『戦場に駆ける金の鎧あり』


それは幾つもの世界線に、
噂程度の物から、歴史として綴られるものまで。

それぞれの戦場に生き抜く者達と
出会い、盟友となり、共に戦い、時に敵対し、
彼らの覚悟と運命を見届ける。

やがて戦乱の終わりを見届けると、
人知れずいなくなっているのだ。
これは他のあらゆる世界線においても、共通のことらしい。

今となってはこれ以上彼のことを知る由はないが、
この世界『メルンテーゼ』で、金の鎧は戦場を駆け抜け、
盟友の覚悟と運命を見届けたということだけは、私の心に刻まれている。

*

王城前……

立ち並ぶ城がすぐそこに見える。
そこにいる金楊騎士は初めての戦場に心を躍らしているのだろうか。
まっすぐと城を見据え、風に金色のマントをはためかせている。

よく通る声だ。
異世界のあらゆる戦場を渡り歩いてきたと話していたが、
この通る声で幾つもの勝鬨をあげてきたのだろうか。

付け足すように、唐突に隣にいる私に話題を振る。
なぜかいきなり盟友扱いをされているが、異世界から来たばかりの彼にたまたま出会い、
このメルンテーゼと、今勃発している一揆の説明をしただけである。
……というはずだったが、金の鎧の勢いに押されるままなぜか契約していた。

私は数々の戦場を潜り抜けてきたわりには少々能天気な彼に呆れるが、
そんな私をよそに勝手に話を続ける。

勝手に奮起した金楊騎士は、右手に持った槍を天に掲げる。

マントがさらに翻り、背中に埋め込まれた大きな金時計が太陽の光に反射する。
横目でその光に若干顔をしかめながら、

この金の鎧は一体何なのか。

幾つもの戦場を駆けぬけて一体どうするというのか。

考えたところでまだこの金の鎧について何もわからないことだらけだが、
とりあえず先が思いやられるなと、王城へ走る金楊騎士の後姿を見ながら
軽く溜め息をつくのだった。

*

唐突に押し掛ける金の鎧。

頼まれてすらいないのに勝手について行く金楊騎士に、アニマは頭を抱える。

アニマと契約を交わしたときもそうだったらしいが、

強引に仲間であるつもりらしい。

叱られそうならなぜやるんだ……と遠目で呆れ気味に見てるアニマであった。