「ふむ……」

軽く動いて感触を確かめる。久々に身体と心が一つになったから多少違和感があるが……まぁ何とかなるか

(……？)

ふと傍に在るべき存在──同行者の少女の不在に気付く

(やれやれ……いい加減な。違う世界に送っちゃいないだろうな？

心中で独りごちながら転送者──今回のクライアントの顔を思い浮かべる。世話をしようにも対象がいなきゃ出来ないんだけどな

まぁ流石に送り先が違えば再送してくるだろう。或いはこっちが向こうに送られるか

とりあえず現状の把握に努めるとしよう

心と身体の記憶によるとここはどちらが居た世界とも違うらしい。何でここに纏められたのかは分からんが考えたところで埒は明くまい、今は動くのが先だ

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「一揆、ねぇ」

ランドマークとして城が見えたのでとりあえず近づいてみたら謎の農民の襲撃を受けた。迎撃して尋問することで現在の情勢は大体理解した(どうも王の兵士と勘違いされて襲われたらしい)

「王がネクターさ独り占めすたせいでオラのティミーも……」
「ティミー？羊か？」
「いんや、エンブリオだ」

エンブリオ？一巡した世界で神父を撲殺した少年かね

「おめさこの世界始めてか？ちょっと待ってくんろ。えらーいセンセさ呼んでくっから」

そう言って農民が森の中に消えてゆく。まぁそのまま逃げたって構わんが……とりあえずここの住民は多重世界の概念が一般的で話が早い

暫くすると律儀にも農民が戻ってきた、白衣を着て右手に図鑑を、左手に紅い花を持った初老の男性を連れて。妙に既視感がする男だな

「初めまして！メルンテーゼへようこそ！私の名前はオーキッド、皆からはエンブリオ博士と慕w「帰れ、版権的に考えて」

こいつはアウトだ、オマージュ以上の何かがプンプンする

「さておきこの世界ではエンブリオと呼ばれる生き物たちがいたるところに住んでいる！そのエンブリオという生き物を人はペットにしたり勝負に使ったり……」

遮ったのに堪えちゃいねぇ。これだから学者ってのは……(知り合いの考古学者も中々のキワモノだ)

「で、エンブリオはネクターとやらで捕まえるんだな？」
「捕まえるんじゃない、契約するんだよ。でも彼が言ったように王がネクターの独占を始めてね……民間のネクター流通量は減少の一途を辿っている。我々在野の身には嘆くべきことだ」

そこでオーキッドが手に持ってた紅い花を差し出す。これがネクターか

「いや、これはハイビスカスさ」
「何で持ってるんだよ……」
「HAHAHA！メルンジョークってやつさ！」

訳が分からん。大体の情報は得たしそろそろアリーヴェデルチだな

「おっと待ちたまえ。こっちがネクターだ」

ハイビスカスを胸に刺し、ポケットから透明なケースを取り出す。なるほどハイビスカスとは違う紅い花が入ってる

「で、これがどうした」
「君はこの世界に来たばかりなのだろう？ならまだエンブリオと契っていまい」
「エンブリオ抜きで旅さするのはキツか。センセがアンタに一匹プレゼントするとよ」
「要らんよ。今は貴重なんだろ？」

初対面の相手は信用出来ない。仮に好意だとしてももっと他に渡すべき相手がいるはずだ

「今ここで君にあったのも運命さ。そしてネクターを渡すのもね」
「運命ってのは必然だろ。偶然遭った相手に渡すのが必然か？遭ったことすら必然とか言うのは勝手だが」
「フフッ、実は君のことは彼(農民)が呼びにくる前から聞いていたのさ、ベルンという女性から。このネクターも彼女から預かったものだ」

……ここでその名前が出るか。クライアントからのバックアップってか？やけに仕事が早いな(というか平穏な世界に再転送しろよ)

オーキッドが指をパチンと鳴らすと十二個の異なる色の光体がオレ達を囲むように顕現する。何この演出

「そこに十二匹のエンブリオがいるだろ？好きなのを選びたまえ」
「ふぅ……分かった」

こいつの狙いは分からない(ベルンから大量にネクターもらったのかもしれんが)。だがやつが絡んでるんならとりあえず従ってもいいだろう

目の前の十二色の光。オレが選ぶのは───

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「もっとネクターが欲しければこの森を抜けて西に向かうといい。広場で一揆の参戦者を募集していてね、実力が認められればネクターが渡されるんだ」

自然と人が集まるから探しものもしやすいはずだよと付け加えてくる。まぁそれはそれで助かるが……

「オレは一揆なんざする気は無いぞ」
「だがこの世界で動く気はあるんだろう？ならエンブリオは多い方がいい。契約するためのネクターもね」
「一揆への協力はネクターさもらうための方便たい。気が向いたら手伝えばよか」

むしろこいつの方言の方が気になるんだが。というかアンタ一揆関係者じゃないのか

「おいはセンセの助手や。そこまで一揆自体には意欲的じゃないっぺ」

どんどん方言が崩れてるぞ。さっきオラって言ってただろ

「彼のティミーはちょっと特殊なエンブリオなんでね。知人の私が協力してるのさ」
「左様で。まぁいい、森を抜けて西の広場だったな」

ネクターはどうでもいいが人が集まるなら連れの少女───ユーノの情報が集められる。本人がいるかもしれないし行く価値はあるか

「グッドラック。また後で会おう」
「ティミーさ見つけたらワイに教えてけれ〜」

二人に見送られ広場を目指す。あんま手間なことにならなきゃいいんだが……

どこからともなく、あなたの下へと走ってくる子供が一人

どうやら何かを探している最中に、ふとあなたの姿を目にして駆けつけた様だ。

久しぶりに会えたのが嬉しいのか、彼の顔には感情が率直に出ていた。

彼はあなたの反応や近況が気になるようだ。

いつものごとく神出鬼没にソクの目の前に現れ

そう言って本当に人騒がせなオレオ吸血鬼は霞のように消えてしまった。

（PLめっせーじ！　こちらで改めまして！この度はほんとうに良い機会をくださりどうもありがとうございます、感謝してます！
ということでikkiでは末永く（？）よろしくおねがいしますでーす！