[ side of Krisna　]

「プラカーシュ　ティトリ」

光と蝶。
それが妹の残した書き置きだ。

一年前、妹の失踪はわたしにとっては衝撃だった。
幼い頃から何を考えているのかわからない子だったけど。
一通の書置きだけを残して、突然姿をくらますなんて。

妹がいなくなった日。
わたしは怒って騒いで喚いて泣いた。
妹を追ってすぐに旅立とうとするわたしを
村中の人間に留められて、一年もの間かかってしまった。

もしかしたら、妹がすぐに帰ってくるかも？
なぁんて甘い期待が頭の隅にあったのも認める。
でも、そんなことはありえないのだ。
あの頑固者が自分で出て行ったのなら。

馬車の荷台に揺られながら返事のない問いを呟く。
ここはもうわたしの知る世界じゃない。それが不安と微かな興奮を呼ぶ。
メルンテーゼと呼ばれるここは豊かで平和な国だと聞いている。
だというのに。

わたしは煙を上げて焼き払われた村を発見した。
御者のおじさんが言うには、王の代替わりによる独裁と圧政の結果らしい。
水辺の村は焼き払われ、死体こそなかったものの人影もなかった。
水辺には大きな魚の死骸が浮いていて胸が痛んだ。

なにもできないけれど。
道の端に咲いていた赤い花を供えた。
願わくば、その魂が迷わないようにと。

水の跳ねる音が耳朶に響いて目を見開いた。
なにか視えたような。

あなたが王城前を歩いていると、目の前に眼鏡の女が立ちふさがる。

　

　

眼鏡の女は気取った調子で大きな銃を手に持って見せ、ウィンクしてみせた。

　

　

眼鏡の女に少し遅れて、大きな樹がその身を揺らしながら“歩いてきた”。