世界漂流一日目
よもや、よもや空間移動の術式を急ぎ発動させたら世界ごと飛んでしまうとは。
いやまぁ、あの頭のおかしいヤツの論文の不備には何となく気づいてはいたのだが、そこを直す手間を惜しんで使った自分が悪いことは重々承知ではある。
まぁ飛んでしまった物は仕方ないとして、問題はこの世界にある。問題は大きく分けて二つ、細かく分けるともう少しあるが。
第一に、この世界では術式が使えない。いや、おそらく私の知る世界とは違う法則と概念で動く世界である、と考えるべきだろう。
そもそも世界が世界たる所以とは何か、等と考えた馬鹿はそうは居ないであろう。ほぼ全ての生きとし生けるものは、自分の世界で生まれ育ち、そして死ぬまでその世界にいるからだ。
空想物語として別の世界という物は考えるだろうが、正しい理論として別の世界を定義付け証明したヤツは聞いたことがない。(私の知識不足と言う点も捨てきれないが)
故に今現在、私は現実的に別の世界に居るということを、私の知る、私の使える術式が使えないと言う点をもって別世界・異世界の仮定とする。
これは術式がそもそも私の世界に存在する法則と概念で成り立っているからだ。
世界が変われば法則も概念も変わる。
この問題はこの世界における、私の世界の魔術や魔法に該当する『力』を探しだし解明することで解決出来るだろう、と考える。
第二の問題として、この世界の情勢だ。
一揆、等と歴史の教科書にでも出てきそうな単語の事態が実際に起こっているらしい。
出来ればそのような面倒なことに関わることなく、この世界の概念と法則を解明したいところだ。
が、この世界では"えんぶりお"なる物の力を借り受けることで『力』とするらしい。
その"えんぶりお"の力を借りるために必要な物が、独占支配されているらしい。
私は第一の問題を解決するために、その"えんぶりお"の力を出来る限り多く解明したいのだが、どうもそうは問屋が卸さないようだ。
幸いなことに、この世界でも何故か言葉が通じ、何だかお惚けまくった老人から"えんぶりお"と"ねくたー"を一つゆすりゆずり受けた。
あとは一揆とやらに参加することで、この"えんぶりお"から力を借り受けることが出来るだろう。
とりあえずは腕試しとやらを何とか終わらせて、働き者のヤツと一緒に行動することで楽をしよう。
これが細かい問題だ。
──さて、どうやったら勝手にがんばってくれるヤツを見つけて一緒に行動することが出来るだろうか
追記
なお、物理法則については今のところ大差は見られないので割愛としたい。
専門でもないし