「はぁ、またですか？」

その日、私——レフ——は、イメトお嬢様に部屋に呼び出された。
頼み事があるらしいと、ただそれだけ同僚から伝え聞いた。

時々だが、私は遠方までの使いを頼まれることもある。
鳥類との混血種であり、飛行することが出来るという
私の能力の性質上、それは適材適所というものなのだろう。
今回も、使いか何かかと思っていたのだが……

お嬢様が言うには、「異世界に向かって欲しい」とのことだった。

口を突いて出た言葉が先述のものである。
何しろ、この前にも似たようなことがあったからだ。
あの時は…もう一人、同僚がいたのだが。

「前の時は消化不良だったでしょう？
　だから、改めてどうかなーと思って」

それにしたって。何故、私なのか。

「適任なのよ。貴方は、『昔の』シーちゃんも知ってるもの」

つまりは、今回もシストお嬢様絡みというわけか…。

確か、この前はストレッタが他の世界へ派遣されたはず。
イメトお嬢様は、こうして異世界へと使用人の人たちを
何人か派遣している。

その目的は、表向きは救助・援軍の類なのだが…
本当の目的は、シストお嬢様の身体の異常解決のため。

こう書くと語弊があるが、シストお嬢様は別に不治の病にかかっていたり
するわけではない。今も、ブラス坊ちゃまと庭で組手をしているのを、
窓から見ることができる。

異常というのは……その子供のような容姿のこと。
見た目だけなら、十歳ほど。ただし、シストお嬢様の実際の年齢は二十歳。
そして、私がこの家に仕えて、もう十年以上は経つが…
シストお嬢様の容姿は、昔から全くと言っていいほど変化が無い。
身体の成長が止まってしまっているらしいのだ。

過去に起こった何かが原因らしいのだが、詳しいことは分からない。

ともかく。
それを何とかするために、異世界にまで方法を探し求めているのだ。
イメトお嬢様、本人が行ったことすらある。
仮にも貴族の当主が、そんな無理をしないで欲しいのだが。
…言って聞くような性格じゃないし。

「それで…今度も装備等は殆ど現地調達というわけですか」

「ごめんなさいね。まぁ、ルールのようなものだと思って」

「良いですけどね。……出発は？」

「一週間後、としておきましょうか。
　持ち込むものは少なくても、それなりの準備はあるでしょう？」

「了解致しました。お嬢様」



——そういうわけで、今、私はこの世界にいる。

まずはここがどういう世界なのか、色々と調べなくては。
やるべきことは山積みだわ。