嵌められた。
既に場の雰囲気から嫌な予感はしていたが、紅がゲーム機片手に入ってきた瞬間、それは確信へと変わった。

そもそもおかしいのはわかっていた。
なぜ今更こんな山奥でわざわざ結婚式を挙げるのか、2次会に独身男性が山盛り集まるなんてことを言われたのか、その為に数日休暇をとって欲しいだとか、そもそも2次会以降の主催が多々良の爺様だったこととか……

落ち着いて考えてみると無理にも程がある。
けども、彼氏と別れて人恋しさが募るこの身には、余りにも魅惑の誘いだったのだ。
仕方がない、と自分に言い聞かせる。言い聞かせなければやってられない。

紅がなにやら私を見てニヤニヤしているが、ゲーム機片手な時点であの子も騙されているのだろう。哀れな。

私はため息を、紅は笑いながら状況を飲み込み沈んでいく中、首謀者であろう多々良の爺様や他の古参の皆様が現れた。
現れた、というより入り口を固めて逃がさないためだろう。いったい何が。

つらつらと爺様は私達を騙したことへの謝罪と、本当の用事について話し始めた。
曰く、こうでもしなければお前たちは来ないとの事、旧知の友人を助けるために人手が欲しかったとの事、そしてすぐにでも向かって欲しいという事。

騙されていい気はしないし、こんな格好で助けに行けと？と思う所は多々あるものの、私のような存在でも頼られるというのは少しだけ嬉しい。
私の様なはぐれを囲ってくれている多々良の爺様達には恩もある。
なにより──

私は、嫌そうな紅の顔を見て快諾した。