良い機会だ、絶滅させてやるよ。圧政者共』

『サイネル……私を…私といた日々を…忘れない…で……』

時は真夜中、Xは城からそれほど遠くない場所に位置するとある村に潜んでいた。
情報屋によると、貴族が自ら用心棒を連れてネクターの搾取に赴くそうだ。その情報は大当たりだった。


3階建ての宿の上から、村の中央にある広場を覗く。
そこには村人を足蹴にする貴族数名、怯える村人らがいる。
そして貴族の傍には、よれよれの服を着て刀を携えた背の高い用心棒。
そしてもう一人、矮躯で二丁拳銃を弄くっているもう一人の用心棒の姿が見える。
周りには抵抗のであろう、武装した村人が真っ二つになって転がっている。やったのはあの背の高い用心棒だろう。

村人は貴族に頭をへこへこ下げながら、貴族に頭ほどの袋を渡した。
すると貴族は何やら喚き散らしだした。大方、量が少ないとかその辺りか。
圧政者を前に力なき村人は、ただ頭を垂れるしかない。


…如何なる状況でも、自分のやる事はただ一つ。
Xは立ち上がると、背の高い用心棒に向けて弓を引き絞り、矢を構えて狙いをつける。

アトと呼ばれた仮面が詠唱すると、構えた矢の先が四枚刃になり、うっすらとかまいたちを纏った。

これこそがXの持つ必殺の奥義。そしてその傷跡が、仮面の男が”怪傑X”と呼ばれる所以である。

悪徳たるその身に十字架を刻まんと、矢が放たれる。
放たれた矢は通常の何倍もの速度で用心棒へと向かう

風切り音に反応したのか、用心棒は即座に反応。
矢の射線上から飛びのく。








用心棒（銃） >>
「ア…アニキ…？アニキィィィ！！」

貴族 >>
「な、何事か！何者だ！何者の仕業なのだこれは！」


背の高い用心棒の”死骸”に駆け寄るもう一人の用心棒と、事態に追いつけず慌てふためく貴族。
この時Xは既に、貴族に向けて狙いを定めていた。

もう一つ、矢が放たれる。
放たれた矢はいとも容易く貴族の頭を撃ち抜いた。

直後、響く二つの銃声。
飛来する鉛の玉はXの左腕を抉り、もう一つの玉は仮面を掠める。

用心棒（銃） >>
「アニキの仇ぃぃぃぃ！！」


とてつもないスピードで用心棒が接近する。
Xは屋根を飛び継いで森中へと身を隠す。







−森の中−

Xはマントを破いて変形させ、左上腕に巻きつける。
そして骨のナイフを取り出した。気配を殺して集中し、周囲の気配を探る。



……用心棒がこちらへ向かってきているのが分かる。
こちらの痕跡を頼りに追ってきているようだ。
そして自分の今いる位置は、残した痕跡とは重ならない所にある。


用心棒がXのいる場所を通り過ぎ、身を隠しているXに背を向ける。
Xは忍び足で、用心棒に接近し始めた。


息を殺し、殺気を抑え、忍び寄る。


こちらの動きを察知したのか、用心棒が振り返らんとする。
だが時既に遅く、用心棒が振り返りきる前にXは懐へと潜り込み、ナイフで用心棒の首を掻き切った。


用心棒（銃） >>
「ア…ガふッ……」


用心棒は首から血を流しながらもXを突き飛ばし、焦点の定まらぬ目でXを狙って銃弾を放つ。

一発目は右足を打ち抜き、Xはバランスを崩した。
二発目は仮面に罅を入れた。Xは仰け反り、その場からの離脱を試みる。
三発目にて仮面を砕き、用心棒が最期に放った四発目はサイネルの頭骸をわずかに抉った—

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