一揆の戦列に加わらんと集うものたちの人だかりの中に、
　勧誘活動を行う、黒いマントを羽織った白い帽子の女があった……。

　　＊　＊　＊


　本格的な活動を始めるのは本日が最初となる。

　トルラルールを離れたとはいえ、わたしには法を遵守し、遵守させるという律法騎士としての使命がある。
　当面の大目標としては、守れぬ法を敷く新王の打倒であろう。万人の反発を受けるような法は不完全だ。
　秩序としては成り立たないし、認めることもできない。

　わたしには、まず同志を集める必要があった。
　隊は個人では成り立たない。だが、この混沌とした情勢で数十人、数百人の兵を集めることも不可能だろう。
　そもそも、この地にはトルラルール律法騎士団の威名も届いていない。

　そこで、現実的な四名一組の隊伍を組むこととした。
　どうやら『一揆』の隊はその程度の頭数が都合がいいらしい。郷に入りては郷に従えという教えもある。

　しかし残念ながら、わたしには志を同じくする、秩序の騎士を見つけることが出来なかった。
　例のラルフという男もぼやいているが、一揆参戦者が多すぎるのだ。
　あたりには、暴れる大義名分を得たごろつきばかりがひしめいている。

　それらしいのがいないわけではなかったが、わたしが声をかけると
　なぜか誰も彼も逃げるようにして去っていった。
　憤懣やるかたない。

　しかし、ここは律法世界ではない。現状に不満ばかりを吐いてはいられない。
　同志がいないなら、作ればいいのだ。
　今はまだ混沌の輩でしかない蛮人たちを、啓蒙していくのも律法騎士の果たすべきところではないか？

　考えた末、わたしはまだ仲間のいない者に声をかけることにした。
　意志の弱いもの、自分がなんのために剣を携えるべきなのか理解できたいないものがいい。
　そういった者こそ、わたしの理想をより受け入れやすいだろう。

　必要に迫られれば、蛮人や亜人、魔物どもと剣を並べることだってやってやろう。
　その覚悟はある。

　たったひとりでも、法を維持することは可能だと見せてやろうではないか。