あれからどれくらいの月日が流れたのか。
　確認しようと思えばすぐにでも確認できるけれど、思い出すのも億劫。
　そんな気持ちになって、それこそどれくらい経ったろう。
　妹を探して旅をして。色々あってようやく出会えたけれど、妹はもう妹ではなくなっていて。
　あの子はかつての私と同じ過ちを犯していて。力を求めた結果として、「自分」というものを失ってしまった。
　原初の五龍の力を人の身で操れるわけがないのに。
　妹も私も今から思えば幼く、世界というものをどこか甘く見ていた。だからこそ自分の命を軽く考えていたし、その結果として誰かが代わりに犠牲になって初めてその愚かさに気づかされもした。

「———なんて愚か」

　旅をするようになってから何度も胸で呟いた言葉。
　その愚かさを償うために旅を続けていることに後悔はないけれど、犠牲となった師匠のことを思うと今でも心が痛い。

『また、くだらんことを考えているな。その顔は』

　脳裏に直接届くその思念を発したのは、私の右肩に乗っている緋色の仔龍だ。
　
「……全然、くだらなくなんてないですよ」

　だってこの仔龍は、”師匠”なのだから。
　師匠がこんな姿になったのは、間違うことなく私の所為なのだから。

　私の師匠、緋影はかつて“始原の壱”と呼ばれる原初の炎龍をその身に宿していた。
　私が存在を喰われかけ、妹は喰われてしまった“始原の伍”と呼ばれる雷龍と同じ存在。人であったはずの師匠になぜそんなことが可能だったのかは知らない。でも師匠は彼の龍とその身を同じくし、その力を自由に操っていた。己の意思も、龍の意思を保ったままでだ。協力関係だったのだと師匠は言っていた。
　でも師匠は“始原の伍”に完全に意思を喰われた妹から私を守るために、その力を暴走させ、次元の狭間へ“始原の伍”を道連れに自らを封印したのだ。
　その際、身に宿した“始原の壱”の一部を切り離し、彼の意思ごと私への置き土産としたはずが、“始原の壱”の意思によって、師匠の意思は封印を免れたのだった。

「師匠の身体は私が取り戻します。絶対に」

　それが私の今の目的。