目が覚めるとそこは草原だった。

…ここは、どこだ…。

…一先ず状況を整理するか。

私は先程まで書庫で資料の整理をしていた、筈…だ。
この手にあるノートが、それを物語っている。
だが、今いる場所は紛れもなく屋外。
生い茂る緑にまばゆい太陽。
そして見知らぬ景色。

………ああ、どこか別の場所に召喚されたようだな。
魔法も使えなくなっているから、異世界召喚ものといったところか。

はて、最近そのような本は読んでない筈だが、と夢を疑いつつも一先ずセオリー通りに動いてみることにした。
…のはいいが、肝心の召喚主がいない。
大体こういうものは、側に召喚主がいてその思惑を聞き、望みを叶えたら元の世界に戻れるものだと思ったのだが…
さて、どうしたものか。

しばし思案していると、猫の声が聞こえた。

「にゃぁん」
「…誰かと思えば、クリスか。お前も来ていたのだな」
「にゃん♪」

クリス=ブラン。
私の飼い猫兼メイド兼使い魔兼姉妹のような存在だ。
普段は人型をしているのだが…今は本来の姿をとっているようだ。

「…さっきからにゃんにゃんと、まるで普通の猫のようだな」
「…んなぁ〜…」
「…クリス？」

おかしい。猫型をしていても人語は喋れる筈だ。もしかして…

「異世界にきた事で、私の魔力が低下しているのが原因…なのか？」
「にゅぅ…」

然り、といった風に頷くクリス。


…どうしよう。
かつてない事態に私は頭を抱えた。



ひらりと、花びらが一枚舞い降りた。
紅い花びらだ。
手に取るとふわりと風が舞った。

（なにかおこまりですかぁ〜？）
「！？」

突如、小さな…半透明の少女の姿をしたものが目の前に現れた。