○初日○

地獄からの「門」を抜けると綺麗な青空が広がっていた。

前の世界での修行が終わってから、どれくらい経ったっけ。
いつも通り散々な結果に終わったが、実りもちょびっとはあったと思いたい。

ボロボロだった装備は地獄で作り直してきた。
５００キロ程の岩に持ちやすく取っ手を付けたハンマー。
丈夫な竜骨で作った胸当て。
自作だから出来は良いものとはいかないけれど、それなりのものは用意できたと思う。
首輪だけは父様に新しいのを買ってもらった。
凝ったものは作れないし。


荷物を確認し、地図を見ながら歩き出す。
今回は目標が決まっているからそこにまっすぐ進もう。


この世界から届けられた手紙には結構深刻な内容が書かれていた。
本当は力の有る父上や兄上達が出撃するべきなんだろうけど。
こういう危機的状況の方が成長できる気がするし。

心配なのは弱すぎるからって戦場から追い返されること。
地獄の住人は弱いって噂がたったら困るし…頑張ろう。
私以外にも地獄から向かった人もいるし、地獄代表って訳ではないのが救いだね。



目的地までの道中に、敵に襲われた。
幸い強い相手ではなかったので私でも無事倒すことが出来た。

「…そうだ」

ハンマーで死なない程度に叩き潰した相手に、
手紙に同封されていたネクターを使用してみる。
使い方は良くわからないから、付属の説明書をみながら。

結果は、上手くいったらしい。
ひとつしかネクターは無かったから失敗しなくて良かった。


その後は何事も無く。
昼過ぎには目的地に到着した。

人や動物が沢山いる。
見るからに強そうな実力者が沢山集まっているようだ。
足を引っ張ることだけは避けたい。
知り合いは…いないみたい。
まだ到着していない可能性もあるから、たまに探してみようと思う。

代表さんに挨拶を…と辺りを見回していた時、
後ろから女の人…ルリアンナに話しかけられた。
今回の参謀さんらしい。
エンブリオのことを聞かれた。道中に契約する機会があってよかった。

話を聞いていると、彼女は突然大声で誰かを呼んだ。
声の先には大男。顔が怖い。
どうやらこの人は試験官のようなものらしい。
彼に勝てないようでは、いるだけ無駄だから帰れということかな。

何も出来ずに帰るのは嫌。
私は緊張しながらハンマーを持ち上げ、構えた。
相手は素手だけど、雰囲気で分かる。
本気で行かなければ…負ける。


試験が始まった。