【王城前、薄曇り、微風】

　人が多い。
　夏を迎えて葉が茂っているから攻撃されても当たりにくいとは思うけど、それにしたって多い。間引き前の苗床のようだ。

　ある程度ひとかたまりがやってくると説明をしているみたいだ。それまで少し余裕があるだろう。
　考えていたのは自分のことをいつも通り「おれ」って言うのか、「僕」とか気取ったりした方がいいのか、そんな下らないことだった。
　いや、下らなくないんだ。意外とそういう覚書が、いいことにつながる事もあると思う。少なくとも花はそうだ。ネクターだって花なんだからたぶんそうだろう。

　これははじまる前に書いてるけど、明日からは一日を振り返るのに書くことになるんだろう。
　どこでも物の売り買いができる、って説明が聞こえる。鉛筆もそうであってほしい。あ、手帳も。

ハチェットのカバーを外す。硝子の青い目が揺れた。