「ここがメルンテーゼ…ね」

目の前に広がる緑の世界を一瞥して少女が呟く。

年の頃は十と少し。
白を基調とした不思議な衣装を着て、その容貌には似つかわしくない大きな鎌を手に持っている。
そして、普通の人間には無いもの—ふさふさした獣のみみとしっぽ—がゆ〜らゆら。
どうやら獣人の少女のようだ。

「んー…」

少女があまり表情を変えず頭をぽりぽりと掻く。

「…どこに行くんだっけ？」

道に迷っているらしい少女は辺りをきょろきょろと見渡し、
何かを思い出したかのように懐をごそごそ探り出した。

「めもめも…」

そう言って、懐から小さな紙切れを取り出す。
そこには——



着いたら案内所へごー☆



「………」

無表情で紙切れをビリビリに破った少女は——

「…馬鹿親」

深く深くため息をついた。


「でも案内所たって…そんなのどこに…ん…？」

きょろきょろと辺りを見回しつつ歩き出した少女の前にでかでかと案内所と書かれた看板が目に入る。


「…安直」

「まいっか」

そう言って、少女は案内所へと歩を進めたのだった。