ワイドアイランドの空は今日も青い。


　美味い空気と不味いタバコの煙を一緒に吸うと気分が落ち着いてくる。モンゴリ・アンデス・ワームとの激闘で高まった感情と火照った身体には心地良い。


　この生活も数十年になる。それなりに刺激的な日々であったが、飽きも来る頃合いだった。私は変化を求めた。もっと言うならただ暇つぶしが欲しかった。充足した日々よりも、このタバコの様にクセのあるナニカが欲しい。


　ある日、そんな物足りさを感じる私に知人の土乃（太った蛇のような図体）がなにやら噂話を振ってきた。どうやら近々、こことは違う分割世界で大規模な一揆が始まるという。『民に憎まれた王の結末に興味はないか。』土乃はそう言うと笑って牙を覗かせた。


　何故、よその世界の世情をここまで知るのか。噂と言うにはその言葉には力と確信を感じる。私はこの男の瞳から覗く蛇の狡猾さがあまり好きではないが、持ってきた話の種は十分私好みであった。別段、王の最期が見たいわけではなく、話の中には多くの分割世界から人員を集めているというものがあった。


　私はその世界が多種多様な分割世界と交じることで生まれるカオスに興味を持った。それは私の存在とどこか似ているからでもある。私は世界を渡るため必要なモノを準備し始めた——



　世界を越えた私は当てもないのでただ道なりを歩いていた。途中、少々奇抜な格好をした少女との出会いもあったが、縁があればまた出会うだろう……。


　ここは緑が多く空気も澄んでいる。これから別世界の住人を引き込み一戦しようという世界にしては妙に静かな、それこそ嵐の前のような不気味さがあった。


　しばらくして、私に近づく人影があった。それは麦わら帽をかぶった三つ編みの、まさに農婦といった装いであった。


　先ほどの少女とのやり取りはもう終わったのだろうか？


　そして次は私の番というわけか……。

　彼女の自己紹介を皮切りに話はとんとん拍子で進み、気づけばこのゴツゴツとした男と戦うまで話は進んでいた。

　どうやら私の力といえるモノはここでも適応するようだ。私はそれを確認し、新しいタバコに火をつけた。

閃光、爆ぜる——