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[ 自動書記文箭の述懐 —筆の遊びにまかせて— ] 昨年6月、己は“躍動の世界セルフォリーフ”より、日本へ戻った。 セルフォリーフには、奇妙な生物がたくさん居た。その地で暴動を起こす、様々な動物や物達。それに、彼等を討伐せんとする人々も、また奇な面々だった。己もその一人——。 己と共に些細な時間を過ごした、クヌギという猫にメディアという女性。 いつも眠い眠いと言われて大変な日々を過ごした。誰かと同道する旅など滅多に無いというのに、良きにしろ悪きにしろ、二人は時に、己自身の存在すら悩ませる存在であった。 この短い十数日を、セルフォリーフへ己を行かせた張本人である彼——藤原啓は、何度も聞きたがる。 己は自動書記であり、求められれば原則として質問には答えなければならない。啓はそれを承知で話をせがむのである。 己としては、自分自身の話を何度も求められるのは、いささか気恥ずかしい。気に入ってくれているのはありがたいのだが。 「話」というものは、二度三度と読む内に気がつかなかった事に気がつく事ができるようになる。けれど、それも読み返す内に発見が少なくなり、やがては飽きる。 日本文学者である藤原啓という男は、独自の目線のために「幻想文学者」と揶揄されながらも、30代の若さで教授まで上り詰めた。 それゆえ多忙なはずなのだが、どういうわけだか己の庵へはよく遊びに来る。 無論、放蕩三昧というわけではなく、庵の本を読み、自身の調査を進めている事が多い。それにこの辺りには稀に狐狸妖怪の類が出る。啓はそうした材料から研究を進めるそうだが、けれども、夜になれば手を休めて話をする。それが、己の——その作者の庵の書庫を頻繁に使って良いという条件になっている。 話を最初にするのは啓。彼の出来事を己が記し、話として蒐集の一つに加える。啓は己に話を要求する。ここまでの一連の流れが、己と啓が夜に交わすやり取りだ。 己は、日本各地をめぐり、様々な話を蒐集してきた。それが“自動書記文箭”だからだ。 「自身の代わりに、全国の面白い話を蒐集し、自分に聞かせる事」その願望——妄想が実を結んでできたのが、己である。己は我が身の所有者の願いを叶えなければならない。己を欲したのは作者であるから、当然その所有者は己の作者である。 己が他の本と違うのは、自らの意思とは別に他人に譲渡売買される事が無いという点だ。何度か力ずくで奪おうとした者も居たが、この身に具わる能力によって退けた。そして、作者の望みを叶える——その役目を果たしてきた。 過去形なのは、彼がもうこの世に居ないからだ。作者はずっと前に若くして逝ってしまった。己が旅から帰って来た時には、起き上がるのも大儀そうな様子であった。 月に酔い風に詠い花を愛でた文人は、楓の頃に赤い血を吐いて死んだ。その事は、今も己の中に在る。 折に触れて思い出す。庵には作者が居た。友人と酒を酌み交わし、漢詩を詠ずる作者——あんなものぐさな彼でも——己は大好きだった。 このような感傷に浸れるようになったのは、作者が死ぬより少し前である。 作者との時間は短かった。元々独り身であった作者は、己が炊事をせねば、なかなか飯を食わぬ。酒ばかり飲む。 だが、己は頻繁に旅に出なければならなかった。作者のために話を蒐集するのが、作者が己を生み出した根源なのだから。家事はあくまで兼業のような気分で、作者の願望が優先された。 その頃は自身は本であり、人とは確実に隔てられた存在だと思っていた。今でも事実は不変だが——。 けれど、話を楽しそうに聞く作者。「話をしてくれた礼」と書庫から本を出して、己に読み聞かせては眠ってしまった作者。色んな彼を見てきた。彼だけではなく、彼の友人も皆楽しい人だった。旅先ではたくさんの優しい人に出会った。 もちろん、辛い事もあった。旅の途中で暴漢に襲われた時、己は愚かにも、彼等を唯の追剥だと思っていた。まだ、人間というものがどういうものなのか、上手く理解していなかった。 そもそも本なのだから、理解しようとしていなかったのである。 その結果、作者を、おそらくは生涯後悔させる事になった。あの時だけである、旅程の最中、家へ引き返したのは。追剥の後に親切にしてくれた男も、その親切は見せ掛けだった。これが、己の学んだ、人間の側面である。 そして同じくして——これは己の憶測の域を出ないが、作者は己を今まで唯の便利な本と思っていた、その認識を、改めたのではなかろうか。事の後、帰還した己は作者に事の簡単な顛末を話した。 作者は唯「そうか」と言ったのみであった。 作者の中でどんな葛藤があったのか分からない。己は作者から、突然に金細工の梅の栞を賜ったのである。相当高価だったものだろうに——。当時は、どうして高価なものを己に下さるのか、それすら分からなかった。 唯、その栞は、作者と作品の関係性以上の、彼と己の関係性を示すものだった。唐突の出来事に、己はひどく動揺したものである。 栞は、今でも大事に持っている。 経年もあるが御守りとして持ち歩いているので、何度も修理に出すはめになった。今ではもう、修理に出しても取り合ってもらえない程、ボロになってしまっている。 キッカケは辛い事だったと言えども、それからだ、己が人と本を差別する事を辞め、きちんと人と本の関係性について考えるようになったのは。“自動書記文箭”というものは、一体どんなものであるのかについて、“考える”ようになったのは——。 そうして、この記録に記す一人称を「私」から「己(オレ)」へ変えた。もう二度と、作者を心配させぬようにと。 作者の没後、彼の友人の一人であった風早氏から聞いた話だが、「文箭を旅に行かせるか悩む。今まで、奴の事を誤解していたのを後悔している」と零していたそうだ。 けれども、折角、作者にたくさん聞きたい事。そうだ、己は聞かれ話すモノだったのに、初めて作者に聞きたい事が沢山できたのに。 例えば、己をどうやって作ったか。例えば、己の体はどうして両性になっているのか。例えば、作者は本来己を女性として作ろうとしたのではないか? 例えば。例えば、例えば——。 それなのに、作者は。 彼が居なくなってからは、どうしたら良いか分からなかった。しかし、所有者がこの世を去ったのである。前述の通り、普通、本というのは所有者がこの世を去れば、自動的に財産の一つとして扱われる。現代では、古書買取業者などが買っていくのだ。 だが、時代が時代であったのと、偏狭な地であったせいもあり——作者を葬った後、己は座していた。修復も記録もせず、座敷に座っていた。 その内に体を紙魚が蝕んだ。 作者の後を追おうとしていたと分かったのは、随分後になってからだ。それでも己が今ここに在るのは、作者の友人の一人——作者が倒れたその場に居合わせた、風早氏の御蔭である。 風早氏は楓の頃に姿を消し、そろそろ桜が芽吹こうかという時、真夜中に突然現れて己の肩を強く掴んだ。それから彼は、己のこの先の在り方を示したのだ。 作者は自分の死後、風早氏に己を頼むと——風早氏の言葉を借りれば“親心”が、子である己を案じたのだという。 風早氏は何度も、遅くなった事を謝罪した。彼もまた辛かったのだから、遅くなって当然なのに。気にする事など何も無いのに。 その時には、もう己の右目は虫に食まれて無くなっていた。記録は修復したものの、右目の損失だけは敢えて修復しなかった。 作品が自ら死のうとしたのだ、ひどい誤ちを犯したのだ。 故に現在でも修復していない。否、もう修復できなくなっている。時が経ちすぎたのだ。 けれど、これで良い。右目は、無いままで良い。 右目をそのままにして、何年経っただろうか。 今対峙している男は、当初「修復ができるのならば、右目はどうだ」と尋ねてきた事がある。だから、当時のあらましを彼に聞かせた。 その後、啓は己に右目の事を言うのを辞めた。納得したのだろう。何度も「修復しろ、気味が悪い」と言って、己が頑として聞き入れぬと、そのまま庵を去った者すらあったのだが。 啓は素直で気の良い男だ。 おそらくは、ここ数十年の内で、己が一番信頼している男である。現在は、己が彼の執筆や研究の手伝いをする事もある。 その藤原啓であるが——冒頭の通り、不思議な場所への切符を手に入れる事がある。と言っても、実際はセルフォリーフが初めての事だったが。 どこから調達するのか知らぬ。大方、人間ではないモノからだろう。己の庵を見つけたのだって、そうした素質からだ。 今回も、己の目の前に一枚の切符があった。 畳の上に、手のひらに収まる程度の紙がある。文字は、草書体と片仮名。まるで小さな広告だ。 「啓、これは?」 「今、御前さん言ったじゃアないか。『日本は定期的に旅をしているけれど、今は話の蒐集が難しい』ってサ」 「ええ、そうは言いました。けれど、この切符はどこに行くものですか?」 「安心安全、海外じゃアない」 「そのようですね。海外行きの切符は見せてもらった事がありますが、このようなヘンテコなものではありませんでした」 「だろ?」 「『だろ?』じゃないですよ。これ、どこへ行くんですか?そもそもどうやって?」 啓は機嫌良く笑っている。 そして、かつて、セルフォリーフへ旅立つ前にしたように——己の右手に自らの左手を乗せて、掴んだ。 一瞬で察した。安心安全な旅は約束されていない。けれども啓は嘘を吐いてなどいない。 彼は言ったのは、『海外ではない』である。己はパスポートを持てないために、海外へ行けない。 確かにその点だけは安心だ。が、たった今不安が上塗りされた。 「君が行けば良いじゃないですか」 「無理だって知っているだろう。残念だけれど、俺ぁ戦闘能力なんて無いんだッテ」 柔道か空手でもやっていそうな体つきの割に文学男である啓は、残念そうに言った。己にだって戦闘能力はあまり無い。 「じゃあ、一緒に行きませんか?異世界っていうんですかね、沢山面白い物が見られますよ。そろそろ、セルフォリーフの話も聞き飽きてきたでしょう」 「生憎、俺の休暇はまだ先だ。それに、休暇中もやる事がいっぱいあるんでナア。行きたいのは山々なんだけどナア……」 本当に残念そうだ。セルフォリーフの時も、できれば自分が行きたいと言っていた。 彼は日本文学者であるが、それ以前にゲームや漫画、アニメなどが大好きな男である。いわゆるオタクというものだ。オタクからすれば、ファンタジー世界のセルフォリーフは、夢のような場所だろう。リスクは伴うが、周りには優秀な冒険者が居る事だし、同行程度ならできるはずである。 だからこそ、啓は何度も同じ話を求めたのだ。 それはそれは楽しそうに、そう、かつての作者と同じように輝いた目をして——。 今も、彼の目は期待を宿している。 体つきも声も性格も、啓と作者は違うのに、どうして目の輝きは同じなのか。どうして、思い出させるのか。 正直なところ、興味はあるのだが——前回のように苦労をするのではないかと思うと、微妙な気持ちになってしまう。しかし断りにくい。 1分程悩んだだろうか。結局、折れた。 作者もきっと、同じような顔をするに違い無いのだ。 啓と、きっと同じような気持ちで期待をしているのだ。 そんな事を考えてしまったら、もう負けだ。 「分かりましたよ」 言いながら、切符を手にした。次の行先は、メルンテーゼというらしい。セルフォリーフと名前が似ていなくもない。 啓は喜んで庵の管理を請け負った。行先の提供はありがたいのだが、できるだけ物騒な事は避けたい。そんな事を思っていると、啓は 「ちなみに一揆を起こすらしい」 己は百姓ではないのだが、何を目的にどう一揆を起こすのかというか十分物騒な話だった。 己は自動書記“文箭”である。 知的好奇心旺盛な書物であり、この身に宿す記録を増やす事が生き甲斐かつ存在理由。 今回は、メルンテーゼというところで、なぜか一揆の手伝いをするらしい。やれやれと腰を上げると、啓は己を見上げてこう言った。 「文箭。前も言ったけど、御前さんの作者の事ァどうだって良いんだ。俺は、御前さんのファンなんだよ」 面映くも、今は己にファンというものがあるようだ。 ならば、せめて頑張ってみようという気になってしまうのは、現金な話だろうか。 |
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ジャック(235) からのメッセージ >>
どこからともなく、あなたの下へと走ってくる子供が一人 どうやら何かを探している最中に、ふとあなたの姿を目にして駆けつけているようだ。
久しぶりに会えたのが嬉しいのか、彼の顔には感情が率直に出ていた。
彼はあなたの反応や近況が気になるようだ。
生臭いラミュー(486) からのメッセージ >>
舞兎(732) からのメッセージ >>
麻音(968) からのメッセージ >>
ムツ は 文箭 の肩にとまった
ムイ(1710) からのメッセージ >>
少年のような風貌をした"ソレ"は無遠慮にそう言うと、くっく、と笑い言葉を続ける。
![]() ![]() コミュニティに 4 件のメッセージ! |
![]() | Main Action 1 |
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特にありません。 |
![]() | Battle!! |
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![]() ![]() 攻城戦を開始!
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文箭 は以下を装備!
【防具】 『入木抄』( 衣 / 20 / - / - / - ) 【装飾】 緑色布目菊花紋( 装飾 / 20 / - / - / - ) 第16一揆小隊側の前衛がいないため隊列が詰められた! |
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![]() ▼文箭の行動!
黒色の帯が、獲物を狙う蛇のように襲い掛かる! ストーンブラスト!!Critical Hit!! ラルフに 288 のダメージ! ラルフに 264 のダメージ! ラルフに 260 のダメージ! ラルフに 274 のダメージ! ▼ラルフの行動!
文箭に 144 のダメージ! |
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![]() ▼文箭の行動!
文箭は猛毒への防御効果を2得た! 文箭は衰弱への防御効果を2得た! 文箭は混乱への防御効果を2得た! 文箭は麻痺への防御効果を2得た! ▼ラルフの行動!
文箭に 141 のダメージ! |
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![]() ▼文箭の行動!
ラルフに 535 のダメージ! ▼ラルフの行動!
文箭に 132 のダメージ! |
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![]() ▼文箭の行動!
ラルフに 579 のダメージ! ▼ラルフの行動!
文箭に 131 のダメージ! |
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![]() ▼文箭の行動!
![]() 高瀬舟 Critical Hit!! ラルフに 458 のダメージ!
ラルフに 475 のダメージ! Critical Hit!! ラルフに 461 のダメージ!
Critical Hit!! Critical Hit!! ラルフに 506 のダメージ! ▼ラルフの行動!
文箭に 139 のダメージ!
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4 CP を獲得! |
![]() | You can advance!! |
ネクターをいくつか預かった。
文箭(16) は ルリアンナ材 を獲得! 文箭(16) は ラルフ鉱 を獲得!
そう言って、2人は去っていった。 |
![]() | Main Action 2 |
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![]() 特にありません。
![]() [魔Lv.10]ノーム を成長させました!(Lv.10→11、CP-10) [魔Lv.11]ノーム を成長させました!(Lv.11→12、CP-11) [魔Lv.12]ノーム を成長させました!(Lv.12→13、CP-12)
![]() 料理 を鍛錬しようとしましたが、PSが足りませんでした。
![]() 現在のパーティから離脱し、ひとりになりました! エルザ(1469) からの勧誘に応じ、パーティに加わりました!
![]() 紅色の生命の華が成長し、新たな絆を紡ぐ・・・ CPが 27 増加! |
![]() | Let's Ikki !! |
![]() | Next Battle |
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![]() | DUEL!! |
練習試合を開始!
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![]() | Character Data |
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