「思ったより人がいっぱいいるねぇ、グレイおじさん」
「そうだねぇ」
　金髪の少女が傍らの男性に話しかけていた。周りを見渡すようにしてから露骨に面倒くさそうな顔をして続ける。
「これだけ人がいると、あたしが何かしなくても大丈夫そうだよねぇ」
「確かにねぇ」
「でもサボると目的は果たせないんだよね、面倒くさい」
「そうだねぇ」
　少女は反応の良くない男性にため息をついて歩みを早めた。
　英雄や正義の味方。そのあり方は物語でしか知らない。
　自分はどうやってそれを体現すればいいのだろう。答えはないままに、彼女は水辺へと向かっていった。