違和感がそこにいた。

薄暗い路地裏。不良。不良。頬を押さえ倒れた男。不良。少女。
圧倒的異物がそこに立っていた。

少女というには幼なすぎる、幼女特有の丸味を帯びたむっちりした体。
成長に追いつかないのかやや寸の足りないワンピース。
恐れはおろか、感情も曖昧な視線が不良を見上げていた。

いつの間にそこに現れたのか、不良たちが少女に気づいてからその場の全員の動きが止まっていた。
どれほどの時間が経ったか、奪った財布の中身を数える手が止まっていた不良が、格下と思しき不良に視線でどうにかしろと訴えた。

慌てて下っ端と思しき金髪の不良がしっしっと手で追い払う仕草をするが少女は意味がわからないのかそれをジッとみつめている。
やむを得ず少女を抱えて追い出そうと肩をつかんだ瞬間、金髪の脳裏をさらなる違和感が走った。
ボウリングの球！？消火栓！？
想像を超えた重さ！肉！密度！そして圧倒的重心の低さが不良にそれらを連想させた。

予想外の重さに躊躇した不良の掌中で少女が回った。
不意に回転体に触れた時。人は手中の物を離すまいと握力を強める。
そして回転に巻き込まれた手は捻じれ、肘を巻き込み、肩を外し
それでも衰えぬ回転エネルギーは体全体を錐揉みさせて上空へ跳ね上げることとなる。

金髪が地面に叩きつけられた音に、財布からカードを抜き出しながら横目で確認した不良の目には
大の字になって地面に叩きつけられた金髪以外の姿は見えなかった。
空。
空が見えた。空？遅れて気づく。顎ッ！当たったッ！？何がッッッ！？
顎下を何かにかちあげられたのだということに気づく前に不良の意識は途切れた。
そして、その手から財布が落ちた頃には、残る一人の不良の顔も壁面にめり込まされていた。

不良に絡まれて財布を奪われ、殴られた頬を押さえていた男に財布を拾って渡し
そのまま少女は去っていった。

（なれるだろうか…）
彼女の名は丹波まろん。
（プリキュヤに…）
憧れのプリキュヤになるために、強さを求め、正義を追及する
どこにでもいる少女である。

そして時代は、このどこにでもいる少女を一揆に巻き込むのであった。