[Reboot.
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System Check..... o.k.
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Startup Operating System MURAKUMO.]

……。
目を醒ますと、そこは見知らぬ地だった。
半覚醒状態の視界に入るのは、中世の要塞にも見える巨大な城と、
青々と茂った木々の群れ。
確か私は三ツ藤の本社でメンテナンスをしていたはず……なのだが。
自らの記憶との相違が激しすぎて、軽く眩暈がしそうだった。

「此処は……何処？」

不安から来たモノなのかは定かではないが、そんな事をポツリと呟く。
暫くは草原に座ったままでぼーっとして居たのだが、そんな事をして
居た所で何も進展は無いと結論付け、一先ず現状の把握をせねばなる
まいと、現在地特定のためデータ照合を行うことにした。

「全地球測位システム起動………………測位衛星からの応答無し。
　三ツ藤支援システム起動………………三ツ藤各社からの応答無し。
　救援用ビーコン発信開始………………受信シグナル無し。
　……変ですね、何処からも応答が無い？」

ＧＰＳからの応答がないと言うのは偶にあることだが、ビーコンすら
反応が無いというのは明らかにおかしい。

「少なくとも日本ではない、ということね」

では何処なのだろうか？
欧州やアメリカであれば三ツ藤支社が全域をカバーしているはず……。
などと思考を廻らせていると、ふいに背後から誰かを呼ぶ声が聞こえ
てきた。
「貴方、そこの貴方！」
私が背後を振り返ると、そこには声の主らしき、女性が立っていた。
自分とその女性以外、周囲には誰も居ない。
状況から察するに、どうやら自分の事を呼んでいる様だ。

「初めまして、私はルリアンナ。この一揆を影でサポートする参謀！
　ルリでもアンナでも、好きに呼んでね。
　一揆に加勢してくれるのよね？ありがとうっ！！」

ルリアンナと名乗った女性は、私の返事を一切待たない程に捲くし立
て、一方的に話を続けている。
なんなのだろうか。私、何か悪いことしたのかな？

「あら、エンブリオとはもう結んでいるのね。だったらまぁ大丈夫だ
　と思うけど……念のためっ。
　……ラルフ！ラールフー！！いまこっち来れるー？」

彼女の言う[エンブリオ]とは一体なんのことだろうか。
そんなことを考えていると脇にある林の中からガサガサという音が聞
こえてきた。すると間もなく、一人の男らしき影が木々を掻き分けな
がら、こちらへと向かって来るのが見えた。
どうやら、先程ルリアンナが呼んでいたラルフと言うのは、この男の
ことらしい。

「集中的に増援が来すぎなんだよな、うん。呼ぶのは構わんが
　もう少し計画的にだな……。まずは腕試しだ。ネクターも多くない
　が……何より、無駄な怪我人は減らしたいからな。」

腕試し？　腕相撲でもするのだろうか？　この男は何を言っている？
まさかとは思うが、私と戦闘をする気なのだろうか？
私が冗談を考えている間に、すでにラルフはその大きな拳を握り、戦
闘の構えをとっていた。やる気満々すぎて、その、対応に困る。

「というわけで、貴方の力……見せてちょうだい！
　十分な実力なら、ネクターを預けるわ」

先刻から思っていたが、本当に何言ってんだろうこの女。
私は戦うとは一言もいっていないのだが……。
しかし、そんな思いを余所に彼我の者は戦う気満々だ。
分かった、分かりました、観念します。

「戦闘は苦手なんだけど……仕方ないか」

そうして、私の波乱万丈の一日が幕を開けた。