世界中、とは言わないけれど、私たちは色々なところを旅して来た。
それでも、これだけ多くの植物の群生した土地は見たことが無いから、
本当に、ここは異世界なんだ…と思う。
風の匂いが心地よくて、思わず警戒心が薄れそうになる。
いけない…私は護衛のためにここに来たのに—…

改めて辺りを見回して、護衛対象の少年が見当たらない事に漸く気づく。
大事になる前に、アルファを見つけなければならない。
少し離れた場所で、初めての異世界に興奮気味になっているコロと、
それを嗜めるミルに駆け寄る。
二人共、アルファの姿を見ていないみたい。
そもそも、アルファの匂いが全く感じられないのだから、この近くには居ないのかも。
こんな肝心なところでも、私は役立たず。

途方に暮れる私の前に、赤い髪の女性が近付いて来た。
女性…ルリアンナは、私たちをこの世界に呼んだ一団の…参謀、らしい。
ラルフと言う大男の腕試しで認められれば、
エンブリオ契約に必要なネクターを分けてくれると言う。
エンブリオとの契約は、アルファの目的の為にも必要な事…

ネクターの入手、アルファの捜索。
どちらも、今必要な事。