Day/0.5

---朝 メルンテーゼ　どこか

『え、術使えない？何しにそっち行ったんです？馬鹿なんです？』
「ハハハ、そっち帰ったら一発殴るわ」
　左耳のイヤリングから聞こえてくる遠慮ない女性の声に対し、アリスシアは半眼になりながら返した。
　そんなこんなで世界移動は完了したものの、案の定問題発生である。毎回起きる緊急事態は緊急と言わないのではないか？とか思いつつ。
　とりあえずの一番の問題は魔術が使えない。正しくは全部が全部使えないという訳でもないが、いつも使う手順ではさっぱり発動してくれない。
　さっきの声を肯定するのは癪なものの、このままだと魔術依存度の高いアリスシアが戦力外にカウントされてしまうというのは的を得ていた。
『まあシアの破片術とかチートだし、そのほうがゲームバランス的にいいんじゃないですかね』
「チート言うな、バランス言うな、ていうかあんたらのほうがよっぽどチートだって」
『でも問題はないです。なんでもその世界では「エンブリオ」というものと契約して色々できる世界らしいです。とルールブックに』
「ねえ、初回更新からメタすぎない？」
　発言の突っ込みどころ全部に対して律儀に返信したものの、声は無視して続ける。
『そんな訳でさっさと契約しちゃってください』
「無茶振りすんな」
　言いながら周囲に視線を這わせる。そんなに都合よくそれっぽいものがある訳でもなさそうではあったが------
『あなたのことだから既に世界に適応して契約済みだったりするんじゃないですか』
「……ああ」
　アリスシアは自分の腰に付けていたバックパックに視線を移したあたりで、付けていた板状のキーホルダーがじたじたと動いている事に気付いた。

+ + + + +

Day/0.7

『この私が名付け親になってあげましょう』
「どこぞに吹く熱風とか言い出しそうだから却下したいんだけど」
『ディスくん』
「最近の若い子は知らないからそういうネタ振りするのはやめなさい……モノリでいいかな」
『モノリスだからモノリ？安直すぎない？想像力とか人間性とか色々疑われるよ？』
「……なんでネーミングセンスだけで全人格否定されなきゃならんのだ」

* * * * *

/裏

「ところでなんで今回も私な訳？」
『突然世界が壊れても打ち切りENDしやすいですよね？』
「それ以上やめて」