プロローグ

　話せば長くなるぜ。俺は一度死んだ。何故死んだのかなんて覚えちゃいねぇ。ネクタールをせしめていたクソ領主の館に忍び込んで、まんまと盗み出した帰りに、猟犬に噛み殺されたか、崖から落ちたか、追っ手に槍でケツの穴を掘られたか、まぁ、そんなところだろう。

　気がつくと俺は宙に浮いていた。幽体離脱ってヤツだな。勿論、最初はパニクったさ。クソみてぇな人生の末、神様だってちょっとは信じてたってのに天国にすら行けねぇのかと。しかし俺はこれを好機だと思ったね。領主を呪い殺してやろうと思ったのさ。そうそう、月のない晩だったな。

　んで、幽霊になってクソの館に舞い戻り、クソ領主の目の前まで来たんだが、気づかれもしねぇ。触れることもできねぇ。よく考えれば当たり前だよな、壁だってすり抜けてここまで来たんだからよ。乗り移るってヤツも試したが無理だった。

　途方にくれて館の中をうろついてたら、妙な部屋を見つけたんだ。扉は煤けちゃいるが、錠は汚れておらず、しっかりしている。何となく気になったんで入ってみたら・・・何があったと思う？気色悪いったらなかったぜ。

　子供がいっぱいいたんだよ。ヤツは誘拐までやってやがったのかと戦慄したがよ、それが全部女の人形だとわかったとき、逆にもっとビビッたぜ。だが極めつけはよ、その人形全てにおマ○コがついてるんだ！吐きそうになったが、幽霊だから助かったぜ。

　そこで俺は思いついたんだ。人形なら、もしかしたら乗り移れるんじゃないかってな。試しにやってみたら、それは驚くほど簡単で、5体も自由に動いた。俺は人形たちの中からヤツのお気に入りらしい一体に乗り移った。台座にネームプレートがついてたな。スカーレットって。そいつは純白のドレスを着てたんだが、瞳が真紅のルビーで出来ていた。

　こいつはいい。この人形を使って、このドレスをヤツの血で真っ赤に染めてやるぜ。俺は部屋の中から小さなナイフを見つけだし、服の中に隠すと、じっと機を待った。

　程なくして、ヤツが部屋に入ってきた。ヤツは迷いなく俺の目の前までやってくると、俺の入っている人形を抱え上げ、奥の天蓋付きのベッドまで運んだ。今から思えば、あの純白のドレスは今夜キメてやるぜ！っていうマーキングだったのかもしれないな。

　その先は思い出したくもねぇ。スリスリされてペロペロされて・・・うおぉ、気色悪ぃ。しかも喘ぎ声がうるせぇし、「スカーレットちゃんみて！マーキュリー様が見てるよんほおおおお」とか意味不明なことをのたまいやがる。だが俺は耐えた。体は小さいし、力もどれだけ出るかわからねぇ。チャンスを待つ必要があったからな。しかしいざ挿入の時にはもう限界だった。

　
ヤツは面食らってたな。その時のヤツの顔ったらなかったぜ。しかし一番ケッサクだったのはその後のヤツの台詞だ。

　こうして俺は復讐を遂げた。ドレスは真っ赤に染まった。持てる限りのネクタールを持って、夜が明けないうちに俺の村に帰り、それをそっと目立つところにおいておいた。その後はお前らと大体同じだろう。クソの親玉を討つ為の一揆を起こすって聞いて、すっ飛んできたってわけだ。