この地に降り立った、一人の少女。

「——ここが、メルンテーゼ？」

少女の呟く声に、

「らしいなー」
青年らしき声音が答える。
しかし、其処には少女一人しか居ない。

と、　銀に薄い蒼の混じったような髪の少女、　の姿が歪み。
黄色と緑の混じり入った髪をした青年の姿になって、独特の光彩をした瞳で周囲を見回した。

「いい風が吹いてる」
「…そうね」

今度は、青年の声に、少女の声が答える。
二人の人物が入れ替わるような様。

少女と青年は、　同じ音をした違うもの。
違うものでありながら、　双方が力を出し合って一つの存在として具現しているもの。
その会話は自問自答のような面もあるが　確かに会話でもある。


…それは、かつて使われていた、　気象の単位　が同じ音をした雷神の力を借りて形を成したもので。
形を成した理由は、　単位達が己の座を賭けて闘う場に立つ為だった。

けれども、その闘いは決着を見る事無く、　目的は失われた。
…なのに、　己は消えるでもなく　其処に在った。

なら——　新しい目的を見つけようか。
新しい世界で。

…誰かに力を貸せるなら。
誰かに、　自分達の事を覚えてもらえるなら。
誰かと新しく出会えるなら。

…きっと平凡な、　旅立ちの理由。