「Assassinの綴りをass-ass-inと覚えてしまった悲しいノンケ……それが君だ！」
変態教授・アスタリスクの講義は毎年この一言から開始される。
新受講生たちが軒並み引いていく気配を肌で感じながら彼の舌はさらに滑らかになっていくのだ。
例えばこの年の講義ではこのように続いた。

「この私の講義に青春の貴重な時間を割いてくれたこと、誠に嬉しく思う。
　愛しているぞ諸君。

　時に諸君。私は常々世界平和のために足りないものがあると思っている。それは何か。
　そう、世界には相互理解というものが決定的にかけている。
　お互いのことを理解し得ぬがゆえに生み出される摩擦のなんと多いことか。

　諸君らにとって私の講義がいかなる意味を持つものかはあずかり知らぬ。
　だが私は、諸君らにとって私の講義がよりよい相互理解の一助となることを願ってやまない。

　例えば君！君はどういう類の変態かね！

　ナニ変態ではない？何を馬鹿なことを。この世に生を受けて変態にならずに済む人間などいるものか。
　だがまあ良い、君の歳ではまだ己の性癖を理解し得ぬのも当然のことだろう。
　良いかね諸君！相互理解に必要なことは相手を知るのみならず！
　まずは己をこそ知らねばならんのだ。
　そう、自分がどんな変態なのかをな！

　しかし往々にして人は己の性癖を正しく理解できておらん。
　人は多数派に流れるものじゃからしてな、
　実は単に微乳が好きなのにロリコンだと思っておったり
　実はデブ専なのを巨乳好きと己を偽っておったり、まあ色々とあるものよ。

　もちろん己の性癖をひけらかすのはリスクある行為じゃからして、隠すのは一向に構わんが、
　己を誤解するというのは非常によろしくない！
　多くのことを学び給え！それが己が何者かを知る一助となる！
　そしてお互いに尊重しあうのだ！己の性癖を！



　……では今週はあとプリント配布だけするからね、取ったらかえっていいよ。
　試験は持ち込み有りだから友人にもちゃんと持って行ってあげるように。
　テキストもちゃんと買いなさいね、アレ僕の本だけどね、頑張って書いたから。
　出欠は取らないからね、試験失敗しないようにね。」

銀色の髪の女性が、青い髪の少女をひっぱっている。