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親愛なるグランおじいさま



おじいさまにお手紙を書くのは、随分と久しぶりなような気がしています。
転んで怪我などせずに、元気にお過ごしでしょうか。

おじいちゃんが亡くなってから1年が経ち、一人での生活にようやく慣れてきました。
周りの人たちのおかげで何とかやっているけど、やっぱり自分が作ったご飯を一人で食べるのはなんだか寂しく感じます。

先日、ネクターを巡る騒乱の為に領主家のお友達やそのお姉様、自警団の方々を見送りました。
早くこの戦が終わって、皆が無事に帰ってくることを祈るばかりです。
近々、私もおじいちゃんの仕事を引き継いで旅に出ることになりました。
おじいさま達の様にうまく旅をする事は最初は難しいと思いますが、そのうちにおじいさまを訪ねたいと思っています。
その時には、何かご飯を作らせてくださいね。
久しぶりに会えることを楽しみにしています。



チセ

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「———…、よし。今度は失敗せずにうまく書けた。」


少女はインクの乾いた紙を満足そうに眺めるとそれを丁寧に丸め、金属の筒にしまい、蓋をした。
音を鳴らし椅子から立ち上がると、窓の桟にとまっていた小さな小鳥を覗き込むように見下ろした。


「シピリカ。」

「———…　何か用かな、チセ。」


青と水色が混ざった、その小さな愛らしい外見とは裏腹に、少女の耳に届くのは低い男の声だった。
面倒くさそうに目を閉じている。
少女の眉間に皺がはいった。


「この手紙を、グランおじいさまのところに届けて欲しいの。」


鳥は、目を開けない。
返事をする気も無いようだ。


「シピリカ。」

「———…」

「シピリカ、聞いてる

「はいはい、聞いてますよお嬢さん。」


少女の声を遮るように、小鳥は目を半開きにした。


「結論から言うと、嫌だな。
　私のような者がやる仕事ではない。
　それにあのジジイは、昔から私とはそりが合わない。」


ご丁寧に小さな嘴からため息までついて見せる様子に、少女の眉間の皺は更に深くなった。
紫がかった灰の瞳で、じっと小鳥を睨み付ける。


「シピリカ、今は私があなたとの契約者なのよ。
　それはまぁ、確かに、今までのあなたの契約者に比べたらただの小娘かもしれないけど！
　ちゃんと私の言う事は聞いてください！
　じゃないと、生命エネルギーあげませんから！」


拳をつくり興奮気味に話す少女の言葉を、小鳥は黙って聞いていたが、生命エネルギーをあげないと言われれば、あーわかったわかったと小さな翼を広げ、それを制した。


「———…　チセ。
　君はもう少し淑女らしい頼み方はできないのかい。
　そんな事じゃ

「あぁもう、わかったから！
　立派なレディになれなくても結構！
　それよりも———


少女が続きを言う前に小鳥は飛び立っていった。
羽根を広げるその小さな姿を見送り、少女は肩を落とした。


「家の中も、整理しなくちゃね…。」


いつ戻ってこられるかは、わからない。
戻ってきても、またすぐに家をあけなくてはならないかもしれない。
少女は、家の裏庭へと出た。


「大丈夫かなぁ、なんて、言っちゃいけないよね…。
　私、頑張るからおじいちゃん。」


墓石に名を刻まれた者の魂が天にあるならば、何を思っただろうか。

銃を握る手は小さく震えている

少女は大きく息をついた