うららかな天気、日差しも心地よいそんな日の昼前。
山々や森を取り込みむ、幾重もの広大な曲輪、外郭に守られたその城の天守が遠くに見えた。

「昔話に聞いた難攻不落、鉄壁のオーダワラ・キャッスルも、こんな感じなのかな？」

城郭内に山や森、街を取り込んていたというその伝説の巨大な城は、何十万もの軍勢、幾多の怪物の軍団、魔竜の襲撃にもビクともせずに跳ね返したのだという。

不埒な王を成敗するため一揆を起こす——。
各地に届いた檄文を聞いた時は、父さんや師匠に聞かされた異国のお伽話——罪なき民を苦しめる、山吹色のお菓子が好物の大魔王、アークダイカーン討伐の物語。お菓子が好きなだけで何が悪いのか、私にはよく分からなかったけれど、話は面白かった——を想像していたのだけれど。

「なんだか一揆というより、城攻めみたいだね」

その城郭を望む辺り一帯には、人、人、人…。人の群れ。
ずいぶんと賑やかであり、露天まで開かれていたりする。
そんななか、赤髪を三つ編みにまとめた女性が、てんやわんやと人々をさばいている。

「はーい、一揆に参加される方々は、まずこちらで名前の登録をお願いしますね！
　一通り手続きが終わった人たちは、何人かで班をつくって下さーい！
　進軍は班単位で行います！」

——なるほど。城攻めというより、ピクニックみたいだね。

「お城の近くでこんなことしていて、大丈夫なのかな」


とりあえず受付が終わったら、一緒に行動してくれる人を捕まえなくちゃ。
…あそこに居る格好いい女の人とおじさんに、声をかけてみようかな？