（日記やセリフは間に合いませんでした）


——或る人物の記録

存在を存在足らしめるのは遺伝子や環境などと言った結線論理ではない。
そのような規定された因子はあくまでもその存在の外的部分のみを意匠するだけである。
存在がどのような存在と化すかを決めるのは唯一つ、記憶である。

私たちが私たちらしく在るのは記憶によってその存在を自ら肯定しているからに過ぎない。
今は常に過ぎ去り続け、未だ来ぬ未来は見えず、過去は常に過去として記憶している。
だがその過去が真であるかを証明する術は無い。

あくまでも現在の状況から省みて、記憶した過去がそうだったと信じているに過ぎない。
記憶というのはかくも曖昧でそして不定である。
そのようなもので、存在は存在として成り立つ。

私ですらそうだ。多くの記憶によって今の私が存在する。
この記録もまた記憶を補填し、私が私であったことを肯定しようとしている。

では……。
可能な限り記憶を削ぎ落とし、与えたのは興味とわずかな命令のみの存在を或る場所へと放逐した。
私のような存在が産み落とした人形に純粋無垢と評するのは聊か抵抗があるが、そういった物である。

さて、どのような結果になるか。
私は遠く見守ることにしよう。