とある表紙を開く。
なにやら環境が変わってしまったので、今回から新しい紙束に綴っていこうと思う……
私にとっての日課の1つである「日記」
もちろん今からやるべきことは決まって一つだ。
今日あったことを書き綴り、白いページを文字で埋めていく。
そして回顧録紛いの本へと近づけるのだ。


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見慣れない風景……
本に溢れていた自宅がどれほど幸せだったかよくわかる。
『外』というものはやっぱり何時如何なる時でも慣れないものだ……


私をこの世界に連れてきた当事者はもうどこかに行ってしまった。
ただ、一揆に参加しろ。とだけ伝えてだ。
おそらく、自分の家には当分帰れそうにないだろう。
ならば一揆が終わるまでどこかで時間を浪費することを考えよう……


————世界を移動したからか、久々に日光に当たったせいか、はたまた外的ストレスのせいか、やけに頭がくらくらする。
そんな揺れる頭を抑える私にどこからともなく声がかかる。

声の方に振り返ると、空を仰ぎながらタバコを吹かし、肩をすくめる女性。
その表情には軽い笑いが含まれているが、私にはその意図がまるでつかめない。
身なりは紅色のコートをはおり、帽子もそれに合わせた派手な色合いのものを乗せている。
違和感が無ければおかしいはずの格好、立ち振る舞い。
しかし不思議とこの空間と混ざり合って『普通』を醸し出していた。

どこかの戦士の言葉だ、と付け加えられる。
一揆には参加しない旨を説明しようとしたのだが、どうやら彼女には伝わっていないらしい……

踵を返し森の中に歩を進めようとする。
どこに行けばいいのか分からないが、この人に関わると一揆に参加させられる羽目になるだろう。それだけは勘弁だ。

ことらを諭すようでもなく、ただ言葉を並べ遊んでいるような語り。
しかし意味はしっかりと形作られている。
私はいつの間にかそんな彼女の言葉に意識を奪われていた……

良い暇つぶしにはなっただろう、と手をひらひらさせながら微笑みを向けてくる。

————私は自分の中で『安息』『平穏』『寛ぎ』といった何かが崩れていくのが感じられた。



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ひとまず私は筆をおいた。
まだこの先、記すべきことはあるが小休止とする……