研究所の外の世界を歩くのは久しぶりだった。
いや、ほぼ初めてだったかもしれない。
僕の知る世界はあの研究所の中だけで、僕の居場所はあの埃っぽい研究室だけだったから。
外に出ようなんて思ったこともなかったし、出たいとも思ったことはなかった。
けれど何で外に出ようとしたのか。さすがの僕も待ちくたびれたんだ。
待てども待てども戻ってこない。ということは君は外の世界に居るんじゃないか。
研究所にはいろんな人がいる。けれど君の名を言うものは誰一人としていなかった。
僕も少しは手掛かりがほしかったんだよ。
だからみんなについてこの世界に来た。
幸いみんな顔見知りだし、優しい人たちばかりでよかったよ本当に。
それといつか忘れてしまうのが怖いから君が使ってたであろう手帳を拝借して日記をつけることにした。
君に逢えたら思い出話もできるし一石二鳥だよね。怒られるのは怖いけれど。

この世界に来た時に見つけた赤い花（どうやらネクターというらしい）を
使って契約したウンディーネにクルックスと名付けた。

【今日のごはん】
　研究室の食堂からこっそり拝借したサンドウィッチ

（とある古びた手記より）