その日は、特に変わった事があったわけじゃない。
いつものごとく、姉との些細な喧嘩をして、家を飛び出して……ボクにとってはごく普通の、ありふれた日だった。

ただ、ボクは忘れていた。いや、正確には自分の身に起こるなんて思いもよらなかったんだ。
──非日常的と言うのは、前触れも無く起こると言う事を、ボクはこの日学んだ──

その日もボクはリーチェ姉の着せ替え攻撃から逃げ出して、いつものごとく、町はずれの森へと読書に来ていた。
そして、本を読んでたらうとうとと眠くなり──あぁ、そうそう。なんか呼ばれた様な気がしたな。寝ぼけてたから、何て声をかけられたかなんて覚えて無い。もちろん、なんて答えたかも覚えてないさ。
ともかく、そのまま居眠りしちゃった……んだと、思う。

──何時間寝たんだろう。誰かに声をかけられて、目を覚ますと、目の前に女の子がいた。

……突然のえらい言われようにちょっとむすっとしたボクは、強く聞き返してやったさ。

すると少女は少し間の抜けた顔をすると、ポンッと手を打ち、何かを見透かした様な目でこちらを見てきやがった。くそ、なんかむかつく。

うっわ、なんか嫌な縁だな……くそ、アリスなんて省略形、無くなってしまえばいいのに。
ともあれ少女がアリスと名乗るのに罪があるわけじゃない。それに、ちょっと気になる言葉を使ってるな？

アリスが笑顔で説明をしようとすると、突然横から別の女が声をかけてその説明を問答無用で遮って来た。今度はなんだ？

……うん？一揆？影でサポート？？何の事だ？？

ここで初めてボクは、周囲がいつもの見知った町はずれの森じゃない事に気付いた。は？え？ここ、どこだ！？

ボクが慌ててキョロキョロし始めたのを見て、アリスが説明をしてくれる。

……いや、しようとしてくれた。が、また邪魔される。今度は野太い声で。今度はなんだよ。ボクは一体何に巻き込れてるんだ！？

……いきなり二人でかけあい漫才始めたんだが、ほんと、なんなんだこの二人……
ボクは無性に家が恋しくなって、アリスに話しかけた

？？？
僕は視線で疑問を投げかける。そしてアリスが口を開く

──そして、また横から邪魔される。アリスに説明求めちゃいけないんかな……

……は？

……はい？？？
──そして、とどめ。

──姉さん。ボクは何か、とんでもない事に巻き込まれたみたいです……

辺りをきょろきょろと見回す少女が君のほうに駆け寄り、話しかけてくる。

名乗り忘れたことに気付いたのか、少女はさらに付け加える。

ふと気がつくと、あなたを見つめている人がいる。すると近づいてきて頭をポンと撫でる

目が一瞬鋭くなるが、また笑顔に戻る。