[探索録『異世界：メルンテーゼ』第1週]
目を開けると、そこは見慣れない世界だった。
どうやら、異世界への転移は成功したようだ。

あの少女の様子を見るに、おそらくあの少女が
世界の海を漂う私を、この世界に『呼んだ』らしい。
・・・まぁ、そんな事はどうでもいい。

私の興味は、この世界には神と呼ばれる存在がいるのかどうか。その一点だけだ。
私は背中に背負っていた長剣を取り出し、それを見つめながら考える。

・・・この世界の状況としては、
『その王が半世紀ぶりにその座を降り、そして新たな王が誕生した。


しかし新たな王は、この世界からネクターを根こそぎ奪い取り、独占を始める。

エンブリオを生活の軸としている住人達はその行為に対して反発、

他の世界からの精鋭をも要請し、大規模な一揆を開始した———』

・・・という状況らしい。

もし、『神』と言える存在が居るとすれば、その『王』とやらだろう。
そのために呼ばれたというのなら、多分報酬も出る。
異世界とはいえ、先立つ物は当然必要だろう。
あと、仲間もか。後で探すことにしよう。

私はそう考えると、長剣をひゅんひゅんと振り回し、背中へ納めた。

・・・さて、どうやら向こうでは話がついたらしい。
私の目の前には、隻眼の大男が立ちふさがっている。

「折角納めたのに。」

私は嘆息すると、再び剣を取り出すと正面に構えた。

「・・・ヒゲ面、貴方じゃ私の神様にはなれないわ。あんまりかっこよくないもの。」