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私が漕ぎ出した舟は街を離れ、川を下り、間もなく海に辿り着こうとしている。
といっても、目指しているのは海ではあるが目的地ではない。
海から目的地までは川を少し戻り、東へ東へ、しばらく歩く必要がある。
ここで降りてしまえば目的地へは近いのだが、この舟は街の共有財産である。
鍛代家の跡取り候補として乗り捨てる事等出来るはずがない。

しかし、ここまでの川下りは至って順調だ。初めてにしては上出来だろう。
ひょっとしたら鍛冶師よりこちらのほうが向いているのではないだろうか。


……。
下らない事を考えていたせいだろうか、周りの景色がやけに流れるのが早い。
いや、それはおかしい。そうだ、これは明らかに舟が加速している。
私は本で得た知識を総動員して異常事態の原因を導き出した。

……滝、というやつだな、これは。

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「───試練の内容は以上だ。」

お父さんの長い、それはもうながーい説明がおわったみたいだ。
なぜこういう説明のときはずーっと話し続けるんだろう。
いつもの鍛冶場だと一言、二言なんだけどなあ。

横にいる兄と姉は、しっかりとお父さんの長話をメモしたみたいだ。
あとで一応、写させてもらおう。帰ってきていい条件が分からないし。
ライバルとはいえ二人はきっと、メモを見せてくれると思うんだ。
僕自身、二人からライバル視されていないのはわかっているから。

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試練に使うらしい道具袋をひとつもらった。中身は後で見ろってさ。
持ってみると意外と重たい。何が入っているのかとても気になる。

……はあ、不安だ。
一揆の集まりがあるから合流しなさいって話はされたけど。
そもそも、僕はこの街から出たことがない。はじめてのお使いの難易度じゃないよね。

まあ、僕だけ特別扱いというのもできないんだろうね。
大きな声で手を振って。愛用のハンマーを持って僕は街の門をくぐった。