赤。


生まれて初めて見た、色の名前。

「契約成立。今日からオレは、お前の光だ。」

それはネクターという名の、花の色だった。



ーーーーー


「そろそろ次の仕事を引き受けないといけないな」

剣を腰に携え、アデルはいつもの酒場の扉をくぐる。

酒や煙草の臭い。
人々の笑い声、怒声。

まったくここは賑やかだ、と軽く息を吐く。
しかし人の存在を感じられる場所は、どことなく安心した。


シャラシャラーー


鈴が鳴る様な、金属のぶつかり合う音。
微かに聞こえたその音に、彼女はチラリと視線を投げた。


「これは…また随分と派手な出で立ちだな…」


そこには、オレンジの髪に水色のターバンを巻き、端をなびかせて歩く一人の男。
色見も派手ではあるが、何より目についたのは体中の装飾品だった。

ーー邪魔そうだな。

そうしてハッと我に返る。
いつまでもジロジロ見ている訳にはいかないと、視線を外してカウンターへと足を運んだ。


「マスター、なにか目星い依頼は入っているだろうか？」

「おうアデルいいとこに来たな。お前にうってつけの依頼がちょうど入ったところだ」


内容を聞こうと口を開きかけた瞬間、先程の金属の音が聞こえた気がした。