〜 一日目 〜

　目が覚めたら此処に居た。目の前には不安そうな顔の光る小人。

　昨日までどうしていたか、なぜこのような所にいるのか……さっぱりわからん。
その上なんじゃ？あのテンション高い姉ちゃんは。一揆ってなんじゃそりゃ。
というかワシ、確か老人だったと思うんじゃが。うむ、何度見てもぴっちぴち。
全盛とまではいかんが、大分調子いい頃に戻っておる。
　……って、そんな現象あるものか！？
そもそもワシの名前なんじゃったっけ！？ああもう、わけわからんわ！！

（色々書きなぐった跡）


　落ち着いた。少し記憶を整理してみよう。

　ワシは確かここより幾分か、というか大分平和な世界で暮らしておった。
不思議と、帰りたいという情が湧いてこんのは、多分目的を果たせていたからであろう。
ワシの正義、力、その全てを教えた奴がおった。そいつの成長を見届けられた事、それは覚えている。
やつは確かワシの……ダメじゃな、さっぱり思い出せん。

　まあ、何にせよ、かつての世界に未練は残っていない、という事はハッキリしたのう。


　次に、ワシの名前。

　なんじゃったっけ…？マジで全然思い出せんぞ……ワシ名無しだったんじゃろうか…？
いや、んなわけないじゃろ。確かこう…色っぽい…そう……あか……あお…ブルー……。
んで……なんかこう、二人称的な…あなた、きみ、You、ゆー…ユー…。
うん、まあブロウユとかそんなんでええじゃろ。カッコイイわ。

　ブロウユは苗字として、名前は……こう…せっかく剣と魔法な感じの世界なワケじゃし、
やっぱそれっぽいのがいいのう。ルとかスとかつけたらいいじゃろ。

（この後数ページにわたって様々な名前が書きなぐられている。）

イルビス　デイビス　ルピス　ルペ　マングース

ペルリ　イルペイス　……お？イルペイス。

イルペイスっていいのう。これじゃな。いいじゃん、ワシ完璧。

　そんでくっつけて「イルペイス・ブロウユ」
あ、いいわこれ。やっべ、ワシ天才じゃね？


　って事で、過去やワシ自身についてはこんな所でいいかの。

　それで、落ち着いて考えてみれば、そう困ったことでもない気もしてきた。
未知の地にして未知の時、しかしワシは孤独ではない。
ここに来て初めて遭遇した光る小人についても記そう。
（”えんぶりお”とかいう奴の中の”あにま”という種類らしい。まあ、そこはどうでもいいのじゃが）
ワシが起きるまで見守ってくれておった事、そしてあの輝く瞳を見るに、
まず間違いなく同じ正義の志を持つ者じゃろう。心強い仲間となりそうじゃな。

　そういえばあやつは人見知りなのかなんなのか、全く喋らん。
名前も分からんので「ぴか子」と呼ぶことにした。
（命名した瞬間、口を大きく開いて固まり、暫く体の光すら消えていた。多分ものすごく気に入ったんじゃろう）

　身振り手振りで意思疎通した所によると、ぴか子はこの世界の危うい情勢を何とかしたいと思っておるらしい。
どうやらこの地には動乱が起こっているとのこと、
後に会った、テンションの高い…ルリアンナとかいう姉ちゃんが言っておった”一揆”とやらに関連しているのであろう。
強者を求めるには絶好の場であるし、同じ志を持つ者も、時には砕かねばならぬ者もおるじゃろう。
そして何より、現王とやらの民への仕打ちが許せん。直接会って話がしたい。


　ま、ひとまずは、あのルリアンナとかいう姉ちゃんの言うとおり、この一揆とやらに参加してみるのが上策であろうか。


あ、ここにきて問題を一つ見つけた。
この世界って、団子やういろうはあるのかのう？

……