（0章）
そして物語が閉幕となった。

ネットゲーム「ハーメルン」はとうの昔に終焉を迎えていた。
人は集まらず、仮想現実を運用するだけの財貨は足りなかった。
プレイヤーさえほとんどいない世界で、NPCの虚言だけが回っていた。

しかし、誰もいない世界は、しかしながらきわめて長い間続いた。

名前がよくなかったのだ。
このゲームをするものは、もうほとんどいなかったという。
つぶれるのを待つだけの仮想現実。そこに魔物が入り込んだ。
彼はあらゆる名前や物語を渡り歩くことができた。仮想現実に住まうことなど容易かった。

彼は牧神の姿をしていた。
笛を吹く陽気な羊。

そのネットゲームは、名前がハーメルンだったので、
彼はそのゲームに係っている限り、子供を連れ去る笛の音を手にすることができたのだ。

ネットゲーム「ハーメルン」は、もうプレイヤーなどほとんどいないゲームだったが、
それでもやり続けていたものがいれば、気づいたかもしれない。
このゲームに、少しづつ招かれざるNPCが増えていることに。


この物語はすでに閉幕している。