Halshuggning - 1 -


　一段、一段、登って行く。
　いつもはすぐに登り終えてしまう階段が、今日はやたらと長く感じる。
　永遠に、永遠に、登り続けていられればいいと、思う。
　永遠に、永遠に、登り続けて、たどり着くその先が天の国なら良いのに、と願う。


　十三歩。
　たったそれだけ。
　たったそれだけでたどり着けたのは、もちろん天の国などではなく。
　階下を見下ろせば、好奇、嫌悪、侮蔑、そんな景色が広がっている。
　本当に、吐き気がする。
　それでも僕はここで仕事を果たさなければならない。
　手に馴染んだ商売道具の大きな鎌を、握る。
　ここは、処刑台。命の終わる場所。
　今日、また一つの命が終わるんだ。
　この鎌を降り下ろせば、それで終わり。


　終わり。


　胸の鼓動が荒れる。
　汗が吹き出る。
　空気が、足りない。
　目の前の、床に膝まづく、その姿が歪む。
　群衆の、ざわめきが、聞こえる。
　うるさい、黙れ。お前たちの首を刎ねてやろうか。
　目を、閉じて、息を、深く。


　目を開くと、群衆の方を向いていた顔が僕を振り返って、小さく微笑む。

「大丈夫」

　優しい声だった。
　再び前へと向き直るのを確認して、鎌を振り下ろす。
　これ以上こんな悪意に満ちた世界に晒していたくはなかったから。


　未熟な果実が落ちる音。
　木の床を紅く染めながら、一転、二転。
　まばたきを一つのした、その顔は。
　今、消えた、その命は。


　その日死んだのは、私だった。

—ギルドホーム・マァムブ内部—

通路を歩いていると前から見覚えのある金髪の女性が歩いてきた。

別に親しく会話したことの無い相手だったが、今日は挨拶だけでなく言葉を続ける。

全身に黒の礼服を纏った青年が1人の人物に目を留める。
暫く考えるような仕草を見せた後、青年はその人物の方へと足を進め始めた。

青年は相手に向かって軽く一礼をしてみせた後、話を続ける。

青年はここで言葉を止め、相手の反応を伺い始めた。