「……ふうん、そんなことがあったんだ」
「ええ。そんなことがありました」

手に入れた果実の皮をむきながら、私の肩の上で呟いた祓に頷いた。
私が慣れない料理をしているときは必ず祓が表に出てきて、料理の様子を眺めている。
手に入れた蜜酒の蓋を開け、小瓶の中にとくとくと注ぐと、甘い匂いが辺りに広がった。

「……時風のあのような反応は、はじめて見ました」
「んー……もしかしたら、寂しくなっちゃったのかも。時風」
「寂しく……ですか」

半分くらいまで蜜酒が入ったところで注ぐのを止め、皮をむいた果実を食べやすい大きさに切る。
そしてその果実を蜜酒の中に入れると、丁寧に蓋をする。
次に良質な食材を手に取り、ざくざく切っていると、祓が小さく頷いた。

「時風、ああ見えて寂しがり屋だから」

祓の言葉を聞きながら、切った食材を煮立った湯の中に入れる。
寂しそうな顔をした時風の姿が頭に浮かび、もう一度溜息をついた。