異常なタフさの魔物相手に苦戦しつつも、なんとか二匹は追い払うことに成功した。
そして最後の一匹も追い払おうとしたが、突然ソウハの攻撃の手が緩まった。
不審に思いソウハの方を見てみると、当の本人も困惑している。
魔力が切れたのかと思ったが、見たところそういうわけでもなさそうだ。
そうこうしているうちに、最後の魔物は干し肉を奪って逃げ去ってしまった。

戦闘が終わるとソウハは頭を抱えて、絵に描いたような落ち込み方をしていた。

見かねてそう言ってみたが、ソウハは既に自分の世界に没頭してしまって聞こえていない様子。
時折聞こえる独り言から察するに、なにやら術式を弄ってるようだった。
なるほど、さっきの戦闘での失敗は術式の不具合が原因だったのかもしれない。

こうなるとアラヤにできることはない。
ある程度術式の知識があるなら、自分で考えて組んだほうがしっくりくるだろう。
下手に口を出して邪魔する必要もない。

その日、ソウハは一晩中うなっていた。

*----*----*

次の日。
何事もなかったかのように、いつもどおり先へと進む。
昨晩ソウハは結局寝ていなかったようだったが・・・。

一応聞いてみるが、返ってきた答えは案の定だった。
きっとソウハなら、だいじょうぶじゃなくても「だいじょうぶ」と答えるのだろう。
けっこうな時間を一緒に過ごしているので、なんとなくわかってきた。

あと、こんな風に気軽に手を繋ぐのも止めたほうがいいと思う。
絶対に勘違いする人とかでてくる。

しかし本人に言うわけにも行かないので、顔を背けて再び歩き出す。
手を繋いだまま。

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しばらく歩くと、次第に空気が冷えてきた。
さらに進むと漂う冷気は強くなり、足元を流れていた水を完全に凍らせてしまっていた。
この異常な冷気の出所は、進んでいる道の先のようだ。

そっと白い息を吐き、術式を展開する。
この先に何かがいるのは明らかだ。
慎重に道を進むと、道の先に少し開けた空間が見えた。
そしてそのに三つの影も。
そのうち二つは昨日見た魔物と同じ。
後の一つは始めてみる形だった。
おそらく冷気の発生源はあの魔獣だろう。
冷気の広がっている範囲から察するに、面倒な敵かもしれない。

少し様子を伺っていると、ソウハがアラヤの手を引いて来た道を引き返そうとした。
が、既に敵に気づかれていたらしく、道は大きな氷の壁に塞がれてしまっていた。

こうなるとやることは一つだ。
アラヤの前に立ち、術式を展開するソウハ。
しかしその言葉はいただけない。

ソウハの隣へと歩み寄りながら、展開していた術式をさらに拡大する。