私とアラヤちゃんの息の合った連撃で早速追い詰められたアヒルさん。
しかしこのアヒル、往生際が悪いのか。　事もあろうに食料袋から食料を取り出して食べ始めました。

更に追加で食料を取り出すと、今度は自分の味方の方にも投げて回復させました。
食料を食べてみるみると回復するローレライや酢の物ビースト。　これには私も少し焦ります。
この調子で食料を食べられると取り返したとしても食料が足りるかどうか心配です。

とにかく急いであのアヒルを倒して食料袋を取り返す必要が出てきました。
しかしあのアヒルを守るかのように立ち塞がるのがこの酸っぱい匂いを醸し出してる酢の物ビースト。
凄く厄介です・・・というか酸っぱい匂いでちょっと気持ち悪い・・・。

このままでは埒が明かないと私が全体攻撃用の広域魔術を展開し始めたその時。
酸っぱい匂いを出してる酢の物ビーストが、その隙を狙ってか自分のモズクを私へ投げつけてきます。

あまりの出来事に私は飛来するモズクを咄嗟に防ごうとします。
・・・でも、その行動がいけませんでした。

広域系の術式は私の持つ術式の中でも制御が難しく、かなり集中して使わないと暴走しやすい術式。
そんな術式を展開し始めた時にモズクを投げつけられて集中を途切らされてしまうと・・・。

私の制御下から離れた術式は周囲の魔力を吸い込みながら暴走して周り全てに氷の飛礫を降り注いできます。
もちろん敵味方関係なく全てに降り注いできますから私にも飛んできます。

バシバシと飛んでくる氷の飛礫に思わず声を上げる私。
更に思わぬ方向から氷の飛礫がいくつか飛んできたと思うと、
その飛んできた先にはアラヤちゃんが何とも言えない気まずい顔で私の方を見ています。

どうやら条件反射的に飛んできた氷の飛礫を打ち返したら私の方に飛んでいってしまった様です。
何とも言えない気まずい感じが私とアラヤちゃんの間に流れていきます。
うぅ・・・ごめんなさい・・・。

未だに降り注ぐ氷の飛礫は周囲の魔力が枯渇して術式が保てなくなるまで降り続いていきます・・・。

　＊　＊

暴走した術式も消滅して戦闘も終わり、アヒルから取り戻した食料袋を抱えながら元の居た場所まで戻る私達。
しかしさっきの失敗で二人の仲の気まずい空気が払拭できないでいます。
原因を作ったのは私なのだし、巻き込んでしまったアヤラちゃんに謝らなくてはと
気まずい雰囲気の中で勇気を出して声を出します。

頭の猫耳を垂れ下げながらアラヤちゃんへ申し訳なさそうに頭を下げて謝ります。

そんな私の様子にアヤラちゃんは、
少し間を置いてから私に「気にしてない、私も誤射したしお互い様」とだけ告げます。

殆ど表情を変えないアラヤちゃんなので怒ってるのかどうかはあまり分かりません。
でも今のアラヤちゃんの様子は何となく、少し呆れながらも許してるという風に感じました。

私は少しだけホッとして、失敗したお詫びに取り返した食料を使ってアラヤちゃんへ美味しいご飯を作る事にしました。
美味しいご飯でアラヤちゃん喜んでくれるといいなぁ・・・。

　＊　＊　＊

朝の出来事から既に半日。
私達は水辺を歩いて先へ進んでいると、再び匂った事のある酸っぱい匂いが鼻に入ってきます。

鼻に付くこの匂いに私達は警戒を強めていると、先へ進む道の方から
朝方に見た酢の物ビーストとうねうねイソギンチャクが歩いてこちらに向かってきてるのが見えました。

相手もこちらに気付いてる様です。
私はあの酢の物に若干トラウマを感じつつ、武器を構えて戦闘態勢に入ります。
アラヤちゃんも既に戦闘準備に入ってます。

意気込む私ですがその声は震えてます。　やっぱり酢の物怖い。
そんなこんなで酢の物＆イソギンチャク和えとの戦いが始まります。