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「あら、良い感性」

ダリアは思考する。この存在はなんなのか、と。

「くすくす、警戒されているのかしら」

ぞわり、と耳に響く笑い声。くつくつとどこまでも嗤われているように錯覚する——が、事実嗤われているのだろう、とダリアは考える。

「ふぅん、紛いものの割には、良い従者を見つけることができた様ね。腐っても、かしら」

紛い物？そして、この後ろにいる人物の正体は？——ゆっくりと、後ろを振り向くとそこには

「あら、そういえば自己紹介が遅れたわね。」

「私の名前は白木蓮。」

「よろしくね、紛いものの従者さん」

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同性ですら魅了する笑顔に見惚れていたダリアであるが、暫くすると正気に戻り思考を続ける。
——白木蓮。傘を持つ女性。白銀の少女。植物と共に歩むもの。そして、我が主の姉であり、探し人。

「……失礼いたしました。風斬東様に仕える、『ダリア』と申します。以後お見知りおきを。」

ダリアの中でようやく合点が行った。つまり、目の前の存在は主の探し人だ、と。
最近、件の人物から手紙を受け取った、と主が零していたのを覚えている。ようやく会えるのだと、言っていたのも。

「くすくす、随分と教育が行き届いているのかしら。楽にしていいわよ」

「おほめにあずかり光栄です。」

「マガイモノにしては随分と当たり物件を引き当てたみたいねぇ。腐ってもという事かしら。」

——また、出た言葉だ。マガイモノ。
どうにも、それはダリアの主を差しているようで癪に障る。

「木蓮様、《風斬東》様をおよびいたしましょうか？」

しかし、それもまた家族特有のコミュニケーションなのかもしれない、とダリアは割り切る。出来る従者なのだ、私は。と思いながら自分の中でこっそりと恨み手帳に記すのを忘れずに。

「ええ、マガイモノをね。」

「——失礼、木蓮様。風斬東様がマガイモノ、と？」

くすくすと、不気味に笑う木蓮の様子に眉を潜める。
また、だ。　また彼女は、私が主を風斬東と呼ぶと怒気を雰囲気に混ぜていると気づいたからだ。
最初はコミュニケーションだと考えていたがどうにも様子がおかしい。
だからつい、尋ねてみた。主がマガイモノなのか？と。

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「本当は、あなたがあのマガイモノを。東という名で呼ぶことすら許せないのだけれど。」

「私の弟であり、兄であり、父である存在の名を——」

「風斬東の名を。マガイモノごときに呼ぶのは癪に障るのだけれど」

「この世界に居る、風斬東は数日前に死んだわ。」

「今いるのは、《風斬東》になれなかった《名もない怪物》の成り果て」

「ただの——マガイモノよ」