マールはふてくされた顔で歩いていた。
　「むー…つまみ食いとか、つまみ食いとか、あとつまみ食いが出来ると思ったんだけどなー…
　お嬢様は業腹で空腹ですよ？」
「調理場」と呼ばれる場所の探索を始めて一刻ほど経つが、マールには食べ物の気配、そもそも料理を作る場所、という気配がまるで感じられなかった。 清潔に整えられた金属製の大きいテーブルや、捻ると水が出そうな蛇口や、食材が保存されていそうな冷蔵庫らしい物体は散見されるのだが、どれも不自然なほどに整えられており、現代で例えるならばショールームのような整然さ、綺麗さであった。
　「魔法で気配を隠したり…侵入者に決して食料を与えまいとする確かな意志、
　ここの管理人はわたしより食い意地張ってますね？」
実際にそうだ、とはマールも考えていないが、今マールに必要なのは、事実よりも今から実行することを合理的にするための動機付けであった。
　「そうときまれば、虎穴に入らずんば虎子を得ず。 いちごをくらわばさらまでー」
マールは手近にあった冷蔵庫らしき物体の取っ手を掴み、それを開け放った。
その結果。
冷蔵庫らしき物体の中に潜んでいたモンスターが襲い掛かってきた。
　「なーーーーーーーーーー！」
中に潜んでいたモンスターとの戦闘が始まった。