ラルフに勝利し、一揆へと流されるまま参加することになった少女は、あてもなく彷徨っていた。
彷徨っている理由の一つはエンブリオである。
先日のラルフとの戦闘中、少女は自身が全力を出し切れていない事に気づいた。
それでも勝利することができたのは、契約した覚えのないエンブリオとの契約があったからだ。
これもまた、育ての親とも言うべき男が少女に施したものなのだろうか。
それに対する答えは最早知りようもないが。

そんな少女だったが、変化は思いの他早く訪れた。

相変わらず表情ひとつ変えず、しかし宛のない長旅に疲労は限界だったようだ。
暗殺は得意でもサバイバルは得意ではなかったらしい少女は、
不用意に踏み込んだ枯れた土地にてついに膝を折った。
このまま死ぬのだろうか、それも悪くない。
しかしやはり生に意味などなかったのだなあ、とそんなことばかりを考える少女。
死に対する恐怖はないようだった。
しかし、運命はまだ少女を死なせはしないようだった。
現れたのは一対の蒼き翼。
新たな出会いが少女にどのような変化をもたらすのか。
今はまだ、知る由もない。