空気の色も、匂いも知らないソレだった。
それどころか、風景すら見知らぬソレ。
あえて言うなら、昔見せてもらった母さんの生まれ故郷の風景写真に似ている気がするが、その写真がどんな色をしていたのか思い出せない。

「ここどこだろう」
「さあな」

俺の相棒にて契約関係にある（確か、種族名があったのだがどうしても思い出せない）イリスが何とも感慨のない声で言った。
足元で同じように佇んでいる鷹を抱き上げてぎゅっと抱きしめる。匂いもぬくもりも無い、その鷹の身体。
それは、物心ついた時から馴染んだソレだった。

「俺とイリスは繋がってる」

　返事はないが、それは肯定だった。長い付き合いだったからそれが解る。

「うん、だったらきっとなんとかなる」

不安がないって言ったら嘘になるけれど、うん、イリスと一緒なら俺はなんとかやっていける。
誰かと常に繋がっている、と言う事実は何時だって俺に安心感を与えてくれていた。
それは依存と同意義なのは解っているけれども。

——知らない風の匂い、自分が知っているよりずっと濃い緑の色。
知らない土地というのは、多分俺は嫌いじゃない。






そんな感慨にふけっていた所で三つ編みの女の子に声をかけられる。
で、おっさんまで出てくる。

あ、あのー、説明あんまり要領得ない挙句のいきなり戦闘って何事ですか？