私の名前は四王堂 悠希(しおうどう ゆき)。悠久に希と書いてユキよ。誕生日は8月5日。しし座のO型。なぜこんなわかり切っていることを書いているのかというと私が今置かれた状況が常軌を逸しているからこそここに記すことにしたの。

もしかしたらこの世界は夢かもしれないけど、この日記を綴り続けることで、インクという物質によって私の生を過去に刻むことで私は過去から続いている私であるということを証明してくれるのかもしれない。もしかしたらこれは夢で、この綴っている文字が紙に吸い込まれるように消えて行って、気がづいたらベッドの上で朝を迎えているのではないかと思う。そうであって欲しい。

事の顛末はこう。私はいつも通りちょっかいをかけてきたクソみたいな豚野郎、いえ、豚アマの髪をわし掴みにして引き回してやって意気揚々と帰る途中に後ろから川に突き落とされ、気を失って目が覚めたらここ、メルンテーゼにいたって訳。どう？簡単でしょ？

しかし本当に困ったものよね。本当に夢だったらもう一眠りしていれば勝手に終わるんでしょうけど、いかんせん腕をつねっても痛いし目は冴えて全く眠たくならないし。とりあえずこの腹に一物ありそうなクソアマの言う事に従わないとどうなるか分かったもんじゃないときた。いくら私でも訳の分からない所に流れ着いていきなりランボーになるほどバカじゃないし己の力で出来ることもある程度は分かっている。にしてもこれじゃ一揆というより赤軍ね。こうやって私みたいに畑から生えてきた人間を戦地に送り出し、盗ませ犯させ殺させて最後は捨て置いて土に返す。どっちが悪魔かわかったもんじゃないわ。

でもね、こんな仕打ち程度で屈して人形になるほど私は弱くないの。いいじゃない、全て欺いてでも私は私のいた世界に帰ってみせるわ。何を利用してでも、ね。

さて、何はなくともこの無駄にガタイがいいオッサンと手合わせしないとどこにも進めないみたいだし、まずはさっさと終わらせてしまいましょう。

ところで・・・どうやって戦えばいいのかしら？

どこからか、オオカミの遠吠えが聞こえる。