パンッ！　パンッ！

　遠くから乾いた銃声が２発響いた。いつもの事だ。
　ボクは木に登って、あぁ、仕留めたんだな、と思いながら、赤くてちょっと歪な形の実に思い切り手を伸ばしていた。指先が赤い実をかすめる。両足と左手でしっかりと幹を掴み、右腕をこれでもかー、ってくらいに伸ばす。人差し指の半ばまでが実に伸びると、それを中指とで挟んでもぎ取った。

　何をするにしたって、生きている以上は食事は取らなくちゃいけない。ボク達のようなのを相手に、行商人がいたりもするけど、いつも頼っているわけにはいかない。お金があっという間に無くなってしまう。
　だから、大体は自分達で調達する。木の実を探したり、魚を獲ったり、ウサギを狩ったり。
「こんなもんかな」
　採ってきたいくつかの木の実を、ボクはそっと地面に置いた。今日はあんまり見つけられなかったけど、そんなに少ないって程でもない。あとは、みんなを待っていよう。
「……なんか、すごいな」
　あらためて考えると、自分らしくないことばかりやっている気がする。
　こうやって自然に触れるのも、ゲームに出てくるような悪魔と契約するのも、剣を振るのも……それで命を奪う事も。
　決して軽んじているわけじゃない……とは思うんだけど。だけど、それがすんなり出来る自分は、こうなんていうか……大丈夫なのだろうか、と時々思う。

「戻りましたー」
　左手にうさぎを持って、アプレが戻ってきた。
「おかえり」
　アプレは、戦闘で使っている二丁拳銃を狩りに使用していた。明らかに変な話だった。
　拳銃の有効射程は思ったよりずっと短い。普通、狩りといえば猟銃を使うのだ。敏感な草食動物に感知される距離で使うようなものを、アプレは平気で使い、そして毎度毎度成果を出すのだ。

「なぁ、アプレって、猟師の生まれなのか？」
　あまりのあまりさに、ボクはこないだ聞いたのだ。
「はい？　お父さんたちは畑を耕してましたよ」
　農家の娘らしい。本格的にワケが分からなかった。
「じゃあ、銃なんてどこで覚えたんだ」
「猟師の家の子と遊んでて、かな」
「……どんな遊び」
「山に入って、動物相手にしたり、時々こんな大きい魔物とか相手にしましたね」
　両手をぐんと上に伸ばし、自分の背丈の倍だかそれ以上だかを表現する。
「……今とやってること変わらないじゃないか」
「そうですね。でも上手くなってますよ」
「猟銃は使わないのか？」
「友達は使ってましたけど、私には二丁拳銃が使いやすかったのです」
　胸を張って、得意げに口にするアプレ。
　それは狩りではない。しかし別の意味では確実に狩りだった。

　天性の狩人と呼んでいいかどうか、ボクには未だによく分からない。
　けど、今は頼れる仲間だった。それに、ボクよりはずっと戦いに向いていると思う。
　ひとまずは、それでいいのかな。