雨が降っている。
視界を遮り、全ての音をかき消してしまうほどの激しい雨。

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side ????

土砂降りの中を、走る。
右、左、次はまた右と、必死に周囲を見ながら……。

そうして走ったところで、視界に入るのは無慈悲に降り注ぐ雨と、
雨の隙間から垣間見える、雨に濡れた植物のみ。

見失ってしまった……。
探そうにも、この視界の悪さではどうにもならない。

とにかく、今はこの雨を凌げる場所に行かなければ……。

雨を凌げる場所を探して、再び走りだした。


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side Serena

突然の豪雨で、雨を凌げる場所を探して走っているうちに、護衛のウィスタリアさんとはぐれてしまった。
探そうにも、視界は雨でほとんど何も見えない状態で、彼の名を叫んだところで雨音にかき消されてしまって声は届きそうにもない。

護衛とはぐれて一人でも、この雨の中では襲ってくる者もいないだろう。
それならば、探すのはこの雨が弱まってからの方がよさそうだ。

何もないよりはマシだろうと、荷物の中から傘を取り出して差す。
走れば傘なんて風の抵抗と降り注ぐ雨の重さで壊れてしまいそうだが、幸いにも風はそう酷くはないので、走らなければ何とかなりそうだ。

雨が容赦なく傘にぶつかる不快な音にうんざりしながらしばらく歩いていると、視界の隅に大きな木と思しきものが見えた。

あの木の根元ならば、雨を何とか凌げるだろう。
そう判断して木に近づいていくと、木の根元あたりで何かが動いているのが目に入る。

セリーナ「あら、先客でしょうか……？」

大きさから見て、おそらくは人。
それも、女性か子供だと思われる。

その人物も、同じようにこの雨に足止めされて、雨宿りをしているのだろう。
危険はないだろうと判断して、そのままゆっくりと木へ近づいていった。

近づいてみると人影は女性で、木をじっと見上げていて、私に背を向ける格好になっている。

セリーナ「あのー、すみません。」

声が届きそうな距離まで近づいた時点で、女性に声をかける。

？？？？『ひゃっ！？』

女性は小さな悲鳴をあげながら振り向いた。

着ていたコートが濡れて脱いだようで、薄手のワンピース一枚の軽装。
肩よりも少し高い位置で切りそろえられた銀色の髪に、青い瞳。
背は私よりは高く、凹凸のはっきりした大人びた体型をしているものの、
顔立ちや雰囲気から察するに、おそらくは私と同じ年くらいの少女だろう。

？？？？『えっ！？』

私の観察するような視線で少女をじっと見つめてしまったせいか、少女は酷く驚いた顔で声をあげた。

セリーナ「ごめんなさい、お嬢さん。驚かすつもりはなかったんですけど……。
私もこの雨を凌げる場所を探していて、ここで一緒に雨宿りをさせてもらってもいいか聞きたくて声をかけたんです。」

少女が驚いてこの雨の中を逃げ出していったりしてはまずいと判断して、急いで事情を説明する。

？？？？『えっ、えっと……もちろん、構いませんよ。
……私もたまたまここで雨が止むのを待っていただけで、ここは私の所有地というわけでもないですし……。』

少女は私の視線から逃れるように顔を逸らしながらではあるものの、ここで一緒に雨宿りする事は許可してくれたので、ほっと胸をなでおろした。

それにしても、この少女、何だか気になる……。
どこかで見たような……。

セリーナ「あっ！」

思わず声をあげて、また少女に驚かれてしまった。
少女を警戒させてしまったのか、少女の表情が険しくなってくる。

セリーナ「ごめんなさい、また驚かせてしまって。
私が探している人と貴女が似ているのに気付いて、つい声が……。」

そう、似ているのだ。
髪の色と瞳の色。そして、顔立ちも……。

セリーナ「もしかして、貴女、聖騎士のウィスタリアさんの妹さんじゃないですか……？」

ウィスタリアさんの目つきは若干つり目気味で鋭く、
少女の目は鋭い印象がまるでなかったからすぐには気づかなかったけれど、その点を除けば似ているのだ。
他人にしては似すぎているというくらいには。

私の言葉に少女はまた驚いた顔をした後、静かに頷いた。

？？？？『はい、私はナタリア＝スノーフレーク。ウィスタリアの妹です。
そういえば貴女は……少し前にウィスタリアと話をしていた方、ですね……？』

私が彼女の兄の知り合いだとわかったからか、険しかった表情を緩めて微笑みながら、
無駄のない優雅な動作で一礼しながら挨拶をしてくれた。