前日に引き続きオークとアルラウネの群れに遭遇。
前と同じ敵、しかも数が一昨日より減っていた為、特に特筆する事も無く勝利した。

　一昨日と違ったのは、その際変な人物と出会った事だ。
名前はサバス＝ルナティリウス。どうやらある人物達への助力を求めているらしい。
　ウルド何ちゃらとか、専門用語を意味深に呟いていたが…あいにく御眼鏡に適わなかったようで、そのまま去っていってしまった。ああいった類の人間は結構な確率で有能なので、出来ればコネを作っておきたかったが…仕方がない。
　一応「今はただ流れに乗るがいい」と言っていたので、今後また会う可能性もあるだろう。

　と言うわけでもないがその流れに乗って、今俺達は庭を離れ星屑の小川にやってきている。
　何故なら、伝説のカッパが現れたとの情報が舞い込んできたからだ。俺は聞いたことがなかったが、聞くとヤーパンでは結構メジャーな妖怪らしい。
　スモウと言う肉弾戦が好きで、なぜか頭に乗せてある皿を砕くとやる気を失う、と中々に愉快な生き物なようだ。得意技はケツから手を突っ込んでタマを取る…と、攻撃力技量ともに中々頼もしそうでもある。
　種族的にも能力的にも俺達のPTとの相性はよさそうだったので、一旦寄り道しわざわざ探しに来たわけだ。

　他の味方は多々踏み込んでいるとは言え、俺達にとっては全く未知の領域…当然戦ったことの無い生物達が巣くっているが、不安はない。
先日の戦いを乗り越えた俺達は、当人、エンブリオともに大きく成長している。
特にテツは筋肉を更に強靭に磨き上げたようだ。

　そして何より今俺の手には、念願のこの世界で作られた武器がある。
そう、その名もラルファイザークラッシャー！
　例の…と言っても、前の日記が消失してしまっているから分からないか。
ラルファイザーとは一揆衆本陣に配置されている、一揆衆の将”剛拳のラルフ”を元に作られた戦闘ロボの事だ。
ロボじゃなくホムンクルスとかの類かもしれないが、まあ大体そんな感じでいいはずだ。
彼等はいくら攻撃を受け倒れても簡単に起き上がり、けろりと治ってしまう恐るべき復活性能を誇る。
その量産型剛拳合体ラルファイザーを完全に潰す力を持った武器…という意味をこめた銘だ。

　味方を潰してどうする…と思うかもしれないが、そこはちゃんと考えがある。
現在2000を越える数が王城に向け進軍しているのにも関わらず、王国軍に目立った動きが見えない。
要所には適当に守備兵を配置しているが……逆に言うとそれだけだ。
　考えられる可能性はいくつかあるが……一番高いのは一揆衆全てを殲滅出来るだけの数を揃えられていない、と言うものだろう。
ならば外部世界の生物が大半の進攻部隊をいなし、その間に本陣…この世界の住民を鎮圧、と言う作戦を取る可能性が高い。
この世界の住民が戦意を失えば、俺達の大半は戦う理由を無くして瓦解するしかないからだ。
　次に単に全軍集めるのに時間がかかっている可能性だが…この場合も本陣を狙いに来るはずだ。
何故なら進攻部隊はゲリラ的に戦っており、こちらを標的にする場合戦力の一極集中は非効率に過ぎかえって不利だからだ。
にも拘らず全軍を集めるのならば、それは拠点を落とすのを目的としているからだろう。
　つまり、敵は遠からずラルファイザーと遭遇・戦闘……その強さを理解するはず。
ならばそのラルファイザーを砕く、この武器の恐ろしさもまた理解できるようになるはずだ。
……たぶんな。

　話が逸れたが、ともあれ昨日強力な武器を手に入れた(正確にはダイゴに作ってもらった）。
やはりと言うか当然と言うか、メルンテーゼの物質はエンブリオとの相性が最高なようだ。
今までとは違い、込めた力が武器に上手く馴染んでいくような手ごたえを感じている。
これなら以前とは比べ物にならない程の威力を生み出せるだろう。今から使うのが楽しみだ。
（なお、ダイゴも同等の武器を手に入れている…こちらの名前は普通のクレセントアクスだが）

　ともあれ、備えは万全……今の俺達に負ける要素はない。
　……これで何にも会えずに１日終わったら笑い話だが、幸い不運の神は俺達に興味がなかったらしい。
探索を続けてしばらく、頭に皿が乗った緑の生き物が２体組み合っているのを発見した。
ついでに鳥が舞い踊り、海老がやんやとはやし立てている…なんだあれ？……お、近くにでかい貝も沈んでる。
今日の飯にはいいかもしれん……あいつらもついでに狩っていくか。